わたしのつまらない質問にも答えてくれるなんて……
やっぱり噂はアテにならないな。
だって城越くん、こんなに優しいもん。
「わたし、昨日初めて剣道の試合見たんです。
迫力とかすごくて、ちょっとびっくりしちゃいました」
「俺も、最初の頃はそうだったよ」
「城越くんが?」
ちょっと意外かもしれない。
「すごくみんな一生懸命で、かっこいいなぁって思いました」
ニコリと笑顔で言うと、城越くんはありがとう、と微笑み返してくれた。
うん……やっぱり城越くんは優しいよ。
ちゃんと返事もしてくれてるもん。
「ねぇ、なんで敬語なの?」
「はい?」
あ…言われてれば、わたしずっと敬語使ってる。
む、無意識……
「ごめんなさい。わたし、緊張すると敬語になっちゃって……」
直そうにも無意識なわけで。
ちなつちゃんたちと話すようになった初めの頃もよく言われてたなぁ。
あのときは敬語がでないように気をつけてたんだけど。
やっぱり、ふとしたときにはでちゃうよ。
「水無瀬さん。俺の前では敬語禁止ね」
堅苦しいしの、あんまり好きじゃないんだ、と言われてしまう。
確かに、一応同い年だもんね。
「が、頑張ります」
あっ、と口を押さえたけど遅くて、わたしは城越くんに笑われてしまった。
さ、さっき気をつけるって言ったばかりなのに……
は、恥ずかしいよ……
熱くなる頬を冷ますように、わたしは両手で頬を触った。
「おいおい、ちなつ。日向が笑ってるぜ」
「明日、雨かしら」
隣でカップルらしからぬ会話がされていたことには、わたしは気づかなかった。