「や、見ないで……っ」



慌てて胸の中に隠そうとしたけど、それより早く城越くんがスケッチブックを取り上げて。


あっ、と思ったときにはわたしの体はすっぽりと何かに包まれていた。


すぐ近くで感じる温もりと、爽やかなミントの香り。



あのときと同じ……


わたし、城越くんに抱きしめられて……



か、顔が熱い……っ


抱きしめられているのは恥ずかしいけど、今は顔が見られなくてよかったかもしれない。



「葵……」


「、っ!??」



耳元で聞こえた声に体が揺れる。


というか今"葵"って!!


なっ、どうしてわたしの名前……!?



ぐるぐると頭を回る疑問に混乱していると、





「―――好きだ」



「………え」





城越くんの言葉に、パンッと頭の中の全てが弾けとんだ。



今、え……?わたし、何を言われて……?


空耳?幻聴?


わたしの願望が夢と現実を分からなくしてるの?


ついにそこまでわたしの頭酷くなっちゃったの?



「俺は、葵が好きだ」





………夢じゃ、ない。




「う、そ……」


「嘘じゃないよ」



そっと体が離れて、城越くんがわたしを見つめる。


その瞳は綺麗で、真っ直ぐで……嘘をついているようには見えなかった。



「じゃあ……じゃあ、あの日のキスは……?」



どういう意味を持っていたの?



「葵が、」



そっと、城越くんの右手がわたしの頬を撫でた。




「葵が、欲しかった」


「えっ……!!」




その言葉の意味に顔が熱くなる。