でも、頭ではそう思うのに、体が動かない。


視線が、城越くんからそらせない。



「あ、の……」



声が、上手く出せない……


緊張なのかどうか分からないけど、指先が震える。


城越くんが木の影から出てきて、綺麗な髪が日に浴びて、キラキラと輝いた。


そんな姿にドキンと心臓が音をたてる。



あ、そういえばわたし、前に会ったのってあの雨の日……


不意に頭に浮かんでしまった情景に顔が熱くなる。



どどっ、どうすればっ……?



わたしが頭の中であたふたと慌てている間に、気づけば城越くんはすぐ近くまで来ていて。


触れそうな距離にドキドキする。



顔が、見られない……



「あ、あの………」



どうしよう、どうしよう……!!


顔を俯かせて目をぎゅっと閉じる。



「ここに来ればあお……水無瀬さんに会えると思って」



わたしのすぐ上から降ってきた穏やかで優しい声。


城越くんの、声。


一瞬頭に"?"が浮かんだけど、すぐにさっきのわたしの質問の答えなんだとわかった。



「そ、そうなんだ……」



素っ気ない返事しか返せない自分に悲しくなる。


うぅ……だ、誰か助けて……


といってもこの場所を知っている人なんてわたしと、城越くんぐらいじゃないかな。



「、あ」



驚いたような城越くんの声がわたしの耳に入る。



「それ……俺?」


「えっ?」



ぱち、と目を開けるとそこには前に何故か描いてしまった城越くんがいた。



え、と……確かに、そうだけど……


あれ?なんでこの城越くんが目の前に?


そろそろと顔をあげれば城越くんと目が合う。



やだ……見られた…わたしの、この絵が。


どんな状況なのか分かって、恥ずかしくて顔から火が吹き出そうなぐらい一気に熱くなる。



こんなものを、城越くんに見られるなんて……!