なかなか返事をしないわたしを見て、ちなつちゃんはニヤリと笑った。
「なーに恥ずかしがってるのよ」
「だ、だって……っ」
あんなことをされたあとなら誰だって躊躇うよっ!!
事情を知らないちなつちゃんに言ってもどうしようもないけど……
「城越のこと好きなんでしょ?だったら、」
「ちちち、ちなつちゃんっ!!」
そんな大声でっ!!
慌ててちなつちゃんの口元を手で覆う。
周りを見ると誰もこちらを向いてなくて。
よ、よかった……聞こえてない。
わたしはほっと胸を撫で下ろした。
「ち、ちなつちゃんの好意は嬉しいけど……」
やっぱり、ちゃんと平静で会える気がしない……
ちなつちゃんはあまり深くは聞かずに、そっか、と言って笑った。
「じゃあ、颯から城越にそう伝えるわね」
「う、うん。お願いします。
それと、楠くんと城越くんに、心配かけてごめんなさいって伝えてもらえるかな?」
「分かったわ」
ガラ、と教室の扉が開いて先生が入ってきたので、ちなつちゃんも他の人たちも席に戻っていった。
はぁ……とりあえず一安心。
今城越くんと会ったら、わたしどう反応するか分からないもん……
ため息をこぼすわたしを見て、ちなつちゃんがニヤリと笑っていることも、まして
『こっちは予定通りに進んだわ。
城越に連絡よろしく』
『了解』
こんなメールが交わされていたことも、知る由もなかった。


