あなたの恋を描かせて




「おはよ、葵」


「ちなつちゃん、おはよう」



あれ?


ちなつちゃんがいつもより機嫌がよさそうに見える……?


何かいいことでもあったのかな。



そう思って聞いてみたけど、ちなつちゃんはなんでもないと言って綺麗に笑うだけだった。


気になるけど、ちなつちゃんがそう言うならいっか。


それより……



「ちなつちゃん、メールなんだけど……」



メール?と呟いてから、ちなつちゃんは小さくあぁ、と納得したように声をあげる。



「すぐに気づかなくてごめんね?
わたしそのとき寝てたみたいで……気がついたの、実は昨日なの」



そう。


わたしが熱をだして寝ていたとき、ちなつちゃんはメールをくれたみたいなんだけど、わたしは寝ていたみたいで……


メールの音にも気がつかないぐらい熟睡って……わたしどれだけ寝ていたんだろう。


熱をだすといつもこれだから、体調には気をつけていたはずなのに……



「それで、そのとき浅葱が対応したって聞いたけど……
浅葱、態度とか悪くなかった……?」



浅葱はちょっと表情に乏しいというか、無愛想というか……


初めて会った人はそう思うらしいから心配だったけど。



「え?あぁ…うん。大丈夫だったわよ」


「本当に?」



再度頷くちなつちゃんに、ほっと胸を撫で下ろす。


よかったぁ……


浅葱はわたしにとっても大切な人だもん。


誤解されるのは少し嫌だからね。


そんなことを考えていたので、



「そういえばそういうことになってたんだわ……」



と、ちなつちゃんが小さく呟いていたのに気づかなかった。



「そうだ葵。今日のお昼のことなんだけど」


「えっ!?」



ドキッ、と心臓が跳ねる。


びっくりした拍子に、手に持っていたスケッチブックとノートを落としてしまった。