ため息ひとつを残して玄関へと足を進める。
「そんな浮かない顔してどうしたの」
「おなかでも痛いの?」
 左右仲良く並んだレインブーツが訊ねてくる。ううん、違うの。雨の日は少し気分が重いのよ。
 お気に入りのレインブーツに足を通すと、ふわりと、少しだけ、足元が軽くなったような気がする。ブーツとおそろいのマスカットグリーンの傘を手に取り、私は家を後にした。