彼は言いにくそうに、けれどもきっぱりと私に言ってのける。

私は猛然と反論しはじめた。
「何かしてあげて、それで少しばかりこちらの気分がよくなったら
自己満足なの?
やさしくしてあげよう、と心掛けている事をしたのに、
それは自分の美学を遂行したにすぎないって言葉で片づけるの?
それって、あんまりじゃないか。
もちろん私は神でも仏でも聖人でもないんだから、
そりゃあ無垢な心でやってる訳ではないけど、
相手のことを思ってやっているのは事実だよ。」
 
黙ってしまった彼の前で、私はひたすら言葉を続けた。

「百歩譲って偽善でもいいんじゃないの。
偽善でやさしくできるほうが、何にもしないより少しはましじゃないか。
能書きばかり言って、お前みたいに何もしない人っていうのが
一番始末が悪いんだよ。」
 
こちらもついつい興奮して、刃の鋭い言葉を投げつけてしまう。
彼は鋭い眼光で私を見た。

「もうお前といらん無いは。
じゃあな。」

その一言を残し彼は私の目前から消えていった。

それからというもの、私は孤立した。
友達に話かけても私を無視。
人助けをしただけなのに、それが彼らには、偽善に見えていたらしい。