そんな時、事件が起こりました。



学校中に、私と彼が付き合っていると噂が流れました。




登校するなり、友達がわたしを取り囲み、
質問攻めにされました。


「柏木様と付き合ってるってホント!?」
「ねえどうなの?」
「どっちから告ったの?」
「キスした?」




そこで、私は初めてバレてしまったことを知ったのです。



慌てて教室を出ました。




彼の姿を必死に探して、学校を走り回りました。



皆の視線に、

控えめな話し声に

おびえながら、



それでもやっと彼を見つけました。




やはり、彼も、女子にとりかこまれ、質問攻めにされていました。



私に気づいた彼は、少し顔を歪めて、

歩み寄ってきました。



そのまま、手首を掴まれ、校庭まで連れていかれると、

「お前が言ったのか」


冷たい声でそう言われました。




「違っ……」


彼の凍てつくような視線に射すくめられて、何も言えません。



自分の性格をここまで恨めしいと思ったことはありません。


大好きな人に何も言えない。

それがこんなにも苦しいなんて。


「はあ……」

そんな私の様子に痺れを切らしたのか、
彼はため息をつくと、
振り返って歩き出しました。



「あっ」


彼が行ってしまう。




イヤ、離れたくない。









行かないで