「ーーー・・・っ」
どれくらい泣いたのだろうか。男の腕の力が弱まり、顔を離すと男のスーツの一部は涙で湿っていた。それを見つめハッと我に返る。
「あ、高そうなスーツを汚してしまってすみません」
「これくらい気にすんな」
「でも、すみません」
そういえば、なんだかいろいろやらかしてしまった気がする。感情的になったとはいえタメ口で話してしまったし、我を忘れて大泣きしてしまった。
ある意味泣いてしまいたい。
「・・・おい」
「あ、はい」
「お前、この後どうすんだ?」
男にそう言われ、今何時なんだろうとスマホで時間を確認すると夜の7時だった。
今家に帰っても、この時間帯はあの人が居る。きっと家を出るのが9時くらいのはずだから、それまで繁華街で時間を潰すしかない。
「・・・どうしよう」
男は、ぽつり呟くあたしをチラリと一瞥するとスーツからスマホを取り出し誰かに電話しだした。
