そして次の物語はちょっと天然な男の子と素直になれない女の子の話である。
「もうすぐ来る」
 階段下の壁にもたれかかる一人の男性がいる。そして階段から、三人の女子が降りて来
る。
「ねえ聞いた? バレー部員が教頭の頭にボールを当てて、それで教頭のかつらが外れた
らしくて、バレー部員達しばらく活動停止になったみたいだよ」
「それ本当?」
「本当だって、体育館にいた人に聞いたんだから」
 そして三人組の女生徒が階段から降りてきた直後、壁に隠れていた男子生徒が勢いよく
走って来て、真ん中にいる女性徒の前に立った。
「な……何?」
 突然の出来事に女生徒は戸惑っている。
「俺は君に一目惚れしました。だから俺と付き合って下さい!」
 そう言って男子生徒は深々と女生徒にお辞儀する。
「えっ? 何? もしかして告白?」
「きゃ~~!」
 横にいる女性徒達が盛り上がっている。
「あっ~、ごめん! 私あんたとは付き合えない!」
 女生徒はキッパリと断る。
「何で?」
 男子生徒は聞き返す。
「だって私あんたの事知らないし、それに何て言うか君、私のタイプじゃないんだよね。
ごめんね」
「えっ、でも……」
「それに私一目惚れって信じられないんだよね。だからさ、まあ相手が悪かったと思って
諦めて。それじゃあね」
 女生徒はキッパリと断って、男子生徒の横を通り過ぎる。
「ねえ、ちょっと言い過ぎなんじゃない? いくらなんでも可哀想だよ」
「いいの、いいの。だって本当に興味なかったんだもん。ここで断ってなきゃ、お互い傷
つくだけだしね」
 そう言って女生徒達は教室に戻った。
「そっか……俺、振られたのか……」
 男子生徒は肩を落とす。
「ふふふ。ははは。そうか、俺の事を良く知らないから俺、振られたんだ。だったら話は
簡単じゃないか。彼女と知り合いになればいいんだ」
 そう言って男子生徒も教室に向かった。

 初めまして俺の名前は『仁科(にしな) 隆(たかし)』! 見た目はストレートの短髪で背格好は普通。ど
こにでもいるような高校生だ。ここ『恋ヶ浜(こいがはま)学園(がくえん)』に通う二年生だ。
そしてさっき俺がこっぴどく振られた女性は、俺が一目惚れした同じクラスに通う『橘(たちばな)
愛(あい)』。見た目はショートカットの茶髪で明るく活発な女の子だ。
そして俺は彼女と付き合うためにまず俺の事を良く知ってもらうために、彼女に近付く事
にした。
「とは言ったものの一体何をすればいいんだ?」
俺は悩む。
「まっ、いっか。深く考えるのは俺の性には合わねえ。何とかなるなる。アタックあるの
み」
 俺は物事を深く考えない性格だ。そして俺は彼女に猛アタックする決意をする。

 そして次の日、俺は彼女を見つけると早速彼女のもとに飛んで行く。
「やあ、初めまして、俺の名前は『仁科 隆』! 『恋ヶ浜』に通う二年A組。趣味はロ
ッククライミングで、好きな食べ物はから揚げ。嫌いなものは……」
「ねえ、何やってんの?」
 彼女は呆れ気味に答える。
「何って……自己紹介」
「見れば分かる。そうじゃなくて私が聞きたいのは、あんたは昨日私に振られたでしょ。
何で又来てんの?」
「あぁ、そりゃもちろん俺の事を知ってもらうためだよ」
「何のために?」
「だって俺が振られたのは、俺の事をよく知らないからだろ? だから少しでも仲良くな
って、俺の事を分かってもらうためさ」
「はあ~、諦めてなかったんだ……。分かった。だったらちゃんと言う。私、あんたに興
味ないの。だから私に付きまとっても無駄よ。それじゃあね」
 そう言って彼女は俺の横を通り過ぎる。
「なるほど……俺に興味なかったのか……。だったら話は簡単。俺に興味を持たせればい
いんだ」
 俺は指を前に突き出して答える。そして俺は彼女に俺の事を良く知ってもらうために、
行動を始める。
「え~、ではこの問題分かる人?」
「はい!」
 俺は勢いよく手を上げる。
「はい、それじゃあ『仁科』君」
「はい! 全然分かりません」
「分からなかったら何で手を上げたんですか?」
「ははは……」
 そう言って俺は彼女を見る。
「はあ~」
 彼女は呆れている。それからも俺は彼女に、俺の存在を分かってもらうために猛アピー
ルをする。

そして何の進展もないまま二週間が過ぎる。
「はあ~、あれから二週間も経っているのに何の進展もねえ~。なあ『白金』、どうすれ
ばいいと思う?」
「『仁科』! それじゃあ、いつまで経っても進展がねえぞ」
こいつは同じクラスの『白金(しろがね) 春人(はると)』! 見た目は短髪で見た目は筋肉質で、黒髪の短
髪で髪を逆立てており、陸上部に所属しており筋肉質な男である。
こいつとは二年生になった時に友達になり、何でも話す中になったのである。何で俺が
『白金』に恋愛相談しているかというと、こいつは最近まで俺と同じ今まで一度も女性と
付きあった事がなかったのだが最近彼女が出来たのである。
そして自分の事を『恋愛マスター』と呼んでいるのである。こいつの恋愛知識は全てを
本に頼ってるのである。
「じゃあどうすればいいんだよ?」
「そうだな……まず女の子と付き合うには段階を踏まなきゃいけない。お前みたいに毎日
付き合ってくれって言ってるだけじゃ付き合う事なんか出来ないぜ」
「じゃあ、どうすんだよ?」
「そうだな……うん、女の子はプレゼントに弱い。だからプレゼントするのが効果的なん
じゃないか」
「プレゼント? プレゼントって何あげればいいんだよ? 指輪とかか?」
「それじゃ重いって」
 『白金』は首を横に振る。
「じゃあ何だよ?」
「それは、花さ」
「花?」
「そう、花を貰って気を悪くする女性はいない。だからまず手始めに花を上げて……」
「そっか、サンキュー」
 そう言って俺は走って行った。
「あっ、おい、ったく……あいつ本当に分かってんのかな?」
 『白金』は頭をポリポリとかく。

放課後、俺は学校の帰り道に『花屋』に向かった。
「げっ、花ってこんなに高いのかよ。どうすっかなあ? お小遣いもうねえしなあ……。
って花ってそこら辺に咲いてるだけだろうがー! 何でこんなに高いんだっつうの」。
 俺は激怒する。
「ん? 待てよ。そっか……そういう事か……」
 そして俺はお金を使わなくても花を手に入れる方法を思いつく。

 そして俺は次の日、朝早く学校に向かった。そして俺は学校にある花壇から花を抜く。
「ふふ~ん! これだけあるんだから少しくらいなくなっても平気だろ? それに彼女に
喜んでもらえるなら花にとってもいい事だし、一石二鳥だよな~」
 そして俺は花を持って彼女のもとへ向かった。

「『橘』―!」
「はあ~、又来た……」
 彼女は額に手を押さえ呆れている。
「今日はプレゼント持ってきたんだ」
 俺は自信満々に答える。
「プレゼントって?」
「これだ!」
 そう言って俺はさっき摘んだ花を彼女に差し出す。
「花? しかも一本?」
「どう? どう?」
「どうって何が?」
「嬉しい?」
 俺はそわそわする。
「まあ……悪い気分はしないけど……」
「よっしゃー!」
 俺はガッツポーズをして喜ぶ。
「だったらさ、俺と付き合わない?」
「はあ?」
「俺と付き合ってくれたら毎日花をプレゼントするよ」
「いや、そんなに貰っても困るだけだし、大体花を一本プレゼントされたからって付き合
うわけないでしょ」
 そう言って彼女は俺の横を通り過ぎた。
「クソー! 俺は諦めねえぞー!」
 そして俺は毎日彼女に花を贈り続けた。

そして一週間後。
「なあ『白金』、俺、毎日彼女に花あげてんだけど、全然脈がないんだけど、これってど
ういう事?」
「『仁科』、お前まさかとは思うけど、花をプレゼントして、それで付き合ってください
って言ってるわけじゃねえよな?」
「えっ? 駄目なの?」
「当たり前だろうがー」
 『白金』は思いっきり呆れてる。
「何で?」
「言ったろ? 女の子と付き合うためには、まず段階を踏まなきゃ駄目だって。いきなり
付き合ってくださいって言われて、はい、よろしくお願いしますって答える奴がどこにい
る?」
「じゃあ、どうすんだよ?」
「まずお付き合いするためには、彼女と仲良くなる。それでいい雰囲気になったら告白す
る。常識だろうが!」
 『白金』は俺に指をさして答える。
「だから仲良くなろうと必死にアピールして……」
「だからそれが間違いなんだって。いいか、女の子と仲良くなる第一条件それは……ずば
り『デート』に誘う事だ!」
「おぉー!」
 『白金』がいつもより輝いて見えた。
「じゃ、俺、誘ってくる」
 そう言って俺は勢いよく立ち上がる。
「待て、落ち着け!」
 『白金』が俺を呼び止める。
「何だよ? 早くしねえと休み時間終わっちまうだろうがー!」
 俺はじたんだを踏む。
「いきなり誘ってもOK貰えるわけねえだろう」
「じゃ、どうすんだよ?」
「慌てんなって! まず女の子は異性と二人っきりになるのを警戒する。そこでだ、警戒
されずに誘うには、ずばりWデートだ!」
「お~、で、どうすんの?」
「まずお前が普通に誘う。それで断られたらこう言う。大丈夫二人っきりで遊びに行くん
じゃなくて、四人で出かけるんだと。これで彼女の警戒心も薄らぐ」
「お~、やっぱ凄げえな『白金』は」
「まあ、伊達に女の子と付き合ってるわけじゃないからな。これからも困った事があった
ら俺を当てにしな」
 『白金』は髪をかき分け自信満々に答える。
「おう、分かった! サンキューな!」
 そして俺は彼女にデートを申し込みに行った。

「よう『橘』!」
「何、又来たの?」
 彼女は不機嫌そうに答える。
「おう! 今日は大事な話があってきたんだ!」
「いつもは大事な話じゃないわけ?」
「ん? 何か言った?」
「別に何も……それで大事な話って何?」
「あぁ、そうだった。今度、俺と出かけよう?」
「はあ? 何言ってんの?」
「今度の週末俺と遊びに行こうって言ってんの」
「無理。私行かない」
 彼女は即答する。
「何で? 何か用事でもあんの?」
「そうじゃなくて、あんたと二人っきりって事が……」
「あぁ、大丈夫、大丈夫! 俺達二人っきりで行くんじゃなくて他にもう二人来るから」
 俺は得意げに答える。
「他二人って?」
「ん~と『白金』と『白金の彼女』」
「それってWデートするって事なんじゃ……」
「それじゃ今度の日曜、朝十時に駅前にある大時計の前集合な」
「ちょ……私行くなんて一言も……」
キ~ン~コ~ン~カ~ン~コ~ン! 休み時間の終わりのベルがなる。
「それじゃ、大時計の前で待ってるから」