彼女は首を横に振る。
「それじゃ、いつまで経っても私、前に進めないわ」
「『凪』……」
「それでね私、事故の会った事を振り返ってみたの。そして私は全て思い出したの。『春
人』のお陰でね」
「……」
そして彼女が事故の事をゆっくりと話し始めた。
「あの時、私は陸上部の合宿で練習をしていた。その時、川で溺れている小さな男の子を
見つけたの。その時私は助けなきゃと思って、川に飛び込んだわ。そして私は男の子を助
けて岸にあがろうとしたら足を滑らせて、そのまま下流に流されたわ。そして私が気づい
たら橋の上に立っていた。『春人』と会ったあの橋に……」
俺は信じたくなかった。俺が図書館で見つけた新聞には事故の詳細が小さく載っていた。
彼女は小さな男の子を助けて、自分は足を滑らせて、そして下流に流されたと……。
「そ、そっか……でも無事で良かったな!」
彼女は首を横に振る。
「あの後以来私は病室で眠っているの。ずっとね」
「ずっとって?」
「今、ここにいる私は本当の私じゃないの。私は子供を助けた後、意識不明の重体になっ
て私の体は今でも病室で眠っている」
「何を言って……はっ!」
そう言って俺は今までの不可解な出来事を思い出す。彼女が皆に無視されている事や、
温泉宿で布団が一つしか敷いてない事、彼女が俺の体をすり抜けた事などを思い出す。
「今ここにいる私は、魂だけの存在。いわゆる『生霊』って奴なんだと思う。私もつい最
近気づいたんだけどね」
「『凪』……」
「でも、もうそれもお終い。私は自分の体に戻らなきゃいけないの」
「でも、でも……ちゃんと戻れるんだよな?」
「それは分からない……。もしかしたらこのまま一生目覚めないかもしれない」
「そんな……」
「それでもこのままの関係をずっと続けていくわけにも行かない。だから決めたの。私は
自分の体に戻るって」
「そうか、でもその前に俺は君に伝えなくちゃいけない事があるんだ」
「何?」
「俺は、俺は君の事が……」
俺が彼女に告白をしようとした時、彼女は指で俺の唇を押さえる。
「ありがとう……『春人』……。」私は『春人』といれて良かった。私は『春人』の事を
す……」
それ以上彼女は言葉を発せられない。そして彼女は一息ついて。
「『春人』……私の事は忘れて素敵な人を見つけてください……」
そして彼女の体が透ける。
「持ってくれ! 俺は……俺は……君の事が……」
そう言って俺はその場に泣き崩れる。それを見て彼女は『春人』の頬を優しく触る。そ
して彼女はニコっと笑って天高く上っていき、跡形もなく消えた。
「そんな事出来るわけないだろう。俺は……俺は……お前以外の人を好きになるわけない
だろう」
そう言って俺は何時間もその場で泣き崩れた。
数日後。彼女は病院のベットの上でも目覚める。
「ここは……」
「『凪』! 良かった! 目が覚めたんだな!」
「お父さん……お母さん……」
彼女が目覚めると彼女の両親が傍らで泣き崩れている。
「良かった。『凪』気がついたんだね?」
「そっか……私、助かったんだ……」
そう言って彼女は不意に自分の腕を見る。するとそこには見覚えのある『ミサンガ』が
腕に巻かれてるのを見る。
「夢じゃなかったんだ……」
彼女は『春人』との出会いが夢じゃない事に気づく! そして腕を上げた瞬間、彼女の
腕に巻かれていた『ミサンガ』が切れる。
「あっ、そっか。夢が叶ったんだ」
彼女は切れた『ミサンガ』を見て微笑む。
数日後、彼女は退院し、『春人』に会いに始まりの場所に行った。すると、そこには見覚
えのある後姿があった。
「はあ~~」
俺は大きなため息をつく。
「こんなところで何をやってるの?」
「えっ?」
俺は見覚えのある声に振り向く。するとそこには彼女が立っていた。
「そんな……まさか……」
そう言って俺はその場に泣き崩れる。
「又、泣いてるの? 泣き虫さん」
「『凪』……良かった……。目が覚めたんだな……。俺、俺……」
「うん、これのお陰でね」
そう言って彼女は俺があげて切れた『ミサンガ』を見せる。
「ねえ『春人』、覚えてる? 私、病室で目覚めた時、腕にはめてある『ミサンガ』を見
てあなたとの出会いが全て夢じゃないって気づいたの。そして、その後すぐにはめてある
『ミサンガ』が切れたの。ふふ、夢が叶ったのね、きっと……」
「あ、あぁ……そうだな……」
そう言って俺は又、泣き出す。
「あぁ……もう泣かないで……」
そう言って彼女は俺の頭を優しくなでる。
「俺……『凪』に言わなきゃならない事があるんだ!」
「何?」
「ふう~~!」
そして俺は一息ついて答える。
「俺は、俺は『凪』の事が世界中で一番好きだ! 俺は『凪』以外の人をこの先一生好き
になる事はない! だから、だから俺と付き合ってください!」
そう言って俺は深々とお辞儀をして、彼女に手を差し出す!
「私も……私もずっと前から『春人』の事が好きだったから、凄く嬉しい!」
彼女は泣いて答える。
「じ、じゃあ……」
「私でよければ……」
そう言って彼女は優しく俺の手を取る。
「や、やった~~!」
そして俺は拳を突き出し、思いっきりガッツポーズをして喜ぶ!
「でも、本当に私なんかでいいの?」
「違う! 俺は『凪』じゃなきゃ駄目なんだ! だから、絶対に後悔しない!」
「うん……分かった。それじゃ、よろしくお願いします!」
彼女はニッコリと笑って答える!
「お、おう! 任せとけ!」
俺は自信満々に答える! するとその瞬間、俺が小学校の頃からしていた『ミサンガ』
が切れる。
「あっ」
「『ミサンガ』が切れた。はは、願いが叶ったからかな?」
「願いって?」
「もう一度『凪』に会えますようにって」
「ありがとう」
そう言って彼女は俺に微笑む。
「えっと、それで何をすればいいのかな?」
「えっ?」
「私達これから付き合うんでしょ? だから付き合うって具体的に何をすればいいのかな
って」
「うっ!」
俺は正直何も考えてなかったので何をしていいのか分からなかった!
「そんな事だと思った」
「面目ない」
「あっ、そうだ! 約束したの覚えてる?」
「約束って?」
「ほら、先に『ミサンガ』が切れた方のいう事を何でも効くって言う約束」
「あ、あぁ、覚えてる」
「それじゃ、はい?」
「えっ?」
そう言って彼女は俺に手を差し出す。
「一緒に手を繋いで帰ろ? それが私の願い」
「そ、そうだな……」
俺は顔を真っ赤にしながら彼女と手を繋いだ。こうして俺の奇妙な体験は終わりを迎え
た。けれども俺はこの奇妙な体験に感謝している。何故なら俺はかけがえのない大切なも
のを見つけたからだ。だからこの先何があっても俺は彼女以外の人を好きにはならないだ
ろう。俺は本当の恋を知ったのだから……。永遠の愛があるのか俺には分からない。けれ
ど俺は何があっても彼女と協力して乗り越えていけるだろう。二人で。こうして二人の物
語は続いていくのである。
― 終わり ―
「それじゃ、いつまで経っても私、前に進めないわ」
「『凪』……」
「それでね私、事故の会った事を振り返ってみたの。そして私は全て思い出したの。『春
人』のお陰でね」
「……」
そして彼女が事故の事をゆっくりと話し始めた。
「あの時、私は陸上部の合宿で練習をしていた。その時、川で溺れている小さな男の子を
見つけたの。その時私は助けなきゃと思って、川に飛び込んだわ。そして私は男の子を助
けて岸にあがろうとしたら足を滑らせて、そのまま下流に流されたわ。そして私が気づい
たら橋の上に立っていた。『春人』と会ったあの橋に……」
俺は信じたくなかった。俺が図書館で見つけた新聞には事故の詳細が小さく載っていた。
彼女は小さな男の子を助けて、自分は足を滑らせて、そして下流に流されたと……。
「そ、そっか……でも無事で良かったな!」
彼女は首を横に振る。
「あの後以来私は病室で眠っているの。ずっとね」
「ずっとって?」
「今、ここにいる私は本当の私じゃないの。私は子供を助けた後、意識不明の重体になっ
て私の体は今でも病室で眠っている」
「何を言って……はっ!」
そう言って俺は今までの不可解な出来事を思い出す。彼女が皆に無視されている事や、
温泉宿で布団が一つしか敷いてない事、彼女が俺の体をすり抜けた事などを思い出す。
「今ここにいる私は、魂だけの存在。いわゆる『生霊』って奴なんだと思う。私もつい最
近気づいたんだけどね」
「『凪』……」
「でも、もうそれもお終い。私は自分の体に戻らなきゃいけないの」
「でも、でも……ちゃんと戻れるんだよな?」
「それは分からない……。もしかしたらこのまま一生目覚めないかもしれない」
「そんな……」
「それでもこのままの関係をずっと続けていくわけにも行かない。だから決めたの。私は
自分の体に戻るって」
「そうか、でもその前に俺は君に伝えなくちゃいけない事があるんだ」
「何?」
「俺は、俺は君の事が……」
俺が彼女に告白をしようとした時、彼女は指で俺の唇を押さえる。
「ありがとう……『春人』……。」私は『春人』といれて良かった。私は『春人』の事を
す……」
それ以上彼女は言葉を発せられない。そして彼女は一息ついて。
「『春人』……私の事は忘れて素敵な人を見つけてください……」
そして彼女の体が透ける。
「持ってくれ! 俺は……俺は……君の事が……」
そう言って俺はその場に泣き崩れる。それを見て彼女は『春人』の頬を優しく触る。そ
して彼女はニコっと笑って天高く上っていき、跡形もなく消えた。
「そんな事出来るわけないだろう。俺は……俺は……お前以外の人を好きになるわけない
だろう」
そう言って俺は何時間もその場で泣き崩れた。
数日後。彼女は病院のベットの上でも目覚める。
「ここは……」
「『凪』! 良かった! 目が覚めたんだな!」
「お父さん……お母さん……」
彼女が目覚めると彼女の両親が傍らで泣き崩れている。
「良かった。『凪』気がついたんだね?」
「そっか……私、助かったんだ……」
そう言って彼女は不意に自分の腕を見る。するとそこには見覚えのある『ミサンガ』が
腕に巻かれてるのを見る。
「夢じゃなかったんだ……」
彼女は『春人』との出会いが夢じゃない事に気づく! そして腕を上げた瞬間、彼女の
腕に巻かれていた『ミサンガ』が切れる。
「あっ、そっか。夢が叶ったんだ」
彼女は切れた『ミサンガ』を見て微笑む。
数日後、彼女は退院し、『春人』に会いに始まりの場所に行った。すると、そこには見覚
えのある後姿があった。
「はあ~~」
俺は大きなため息をつく。
「こんなところで何をやってるの?」
「えっ?」
俺は見覚えのある声に振り向く。するとそこには彼女が立っていた。
「そんな……まさか……」
そう言って俺はその場に泣き崩れる。
「又、泣いてるの? 泣き虫さん」
「『凪』……良かった……。目が覚めたんだな……。俺、俺……」
「うん、これのお陰でね」
そう言って彼女は俺があげて切れた『ミサンガ』を見せる。
「ねえ『春人』、覚えてる? 私、病室で目覚めた時、腕にはめてある『ミサンガ』を見
てあなたとの出会いが全て夢じゃないって気づいたの。そして、その後すぐにはめてある
『ミサンガ』が切れたの。ふふ、夢が叶ったのね、きっと……」
「あ、あぁ……そうだな……」
そう言って俺は又、泣き出す。
「あぁ……もう泣かないで……」
そう言って彼女は俺の頭を優しくなでる。
「俺……『凪』に言わなきゃならない事があるんだ!」
「何?」
「ふう~~!」
そして俺は一息ついて答える。
「俺は、俺は『凪』の事が世界中で一番好きだ! 俺は『凪』以外の人をこの先一生好き
になる事はない! だから、だから俺と付き合ってください!」
そう言って俺は深々とお辞儀をして、彼女に手を差し出す!
「私も……私もずっと前から『春人』の事が好きだったから、凄く嬉しい!」
彼女は泣いて答える。
「じ、じゃあ……」
「私でよければ……」
そう言って彼女は優しく俺の手を取る。
「や、やった~~!」
そして俺は拳を突き出し、思いっきりガッツポーズをして喜ぶ!
「でも、本当に私なんかでいいの?」
「違う! 俺は『凪』じゃなきゃ駄目なんだ! だから、絶対に後悔しない!」
「うん……分かった。それじゃ、よろしくお願いします!」
彼女はニッコリと笑って答える!
「お、おう! 任せとけ!」
俺は自信満々に答える! するとその瞬間、俺が小学校の頃からしていた『ミサンガ』
が切れる。
「あっ」
「『ミサンガ』が切れた。はは、願いが叶ったからかな?」
「願いって?」
「もう一度『凪』に会えますようにって」
「ありがとう」
そう言って彼女は俺に微笑む。
「えっと、それで何をすればいいのかな?」
「えっ?」
「私達これから付き合うんでしょ? だから付き合うって具体的に何をすればいいのかな
って」
「うっ!」
俺は正直何も考えてなかったので何をしていいのか分からなかった!
「そんな事だと思った」
「面目ない」
「あっ、そうだ! 約束したの覚えてる?」
「約束って?」
「ほら、先に『ミサンガ』が切れた方のいう事を何でも効くって言う約束」
「あ、あぁ、覚えてる」
「それじゃ、はい?」
「えっ?」
そう言って彼女は俺に手を差し出す。
「一緒に手を繋いで帰ろ? それが私の願い」
「そ、そうだな……」
俺は顔を真っ赤にしながら彼女と手を繋いだ。こうして俺の奇妙な体験は終わりを迎え
た。けれども俺はこの奇妙な体験に感謝している。何故なら俺はかけがえのない大切なも
のを見つけたからだ。だからこの先何があっても俺は彼女以外の人を好きにはならないだ
ろう。俺は本当の恋を知ったのだから……。永遠の愛があるのか俺には分からない。けれ
ど俺は何があっても彼女と協力して乗り越えていけるだろう。二人で。こうして二人の物
語は続いていくのである。
― 終わり ―
