不器用彼氏・彼女

「いや、別に何でもねえよ……」
「そうっすか? それならいいっすけど……」
 そう言って『ダビデ』が練習に戻ろうとした時、俺は『ダビデ』を呼び止める!
「なあ、『ダビデ』、一つ相談したしたい事があるんだけどいいか?」
「何っすか?」
「俺の友達が陸上やってたんだけど、事故が原因で走れなくなったんだ。お前ならどうや
って元気づける?」
「う~ん? そうっすね? あっ、俺なら遊びに誘うっすね」
「遊び?」
「そう、その人は普段頑張ってると思うっすから、息抜きのためにも遊びに連れて行って
リフレッシュさせたらどうっすか?」
「リフレッシュね……。うん、いいかも、サンキュー『ダビデ』!」
 そして俺は部活帰りにいつもの橋に向かう。すると彼女は今日も同じ場所にいた。
「よう『桜田』! 遅くなって悪い!」
「いいよ気にしなくて。『白金』君は部活やってるんだから遅くなる時もあるよ」
「そ、そっか……ところでよ、今日は話があるんだけどいいかな?」
「? ? ?」
 彼女は不思議そうな顔をしている。
「あ~、その~、何だ。『桜田』っていつも頑張ってるだろう。だからさ、今度二人でど
こか出かけねえか?」
「それってひょとしてデートって事?」
「あっ、いあや、別に深い意味はねえんだ。『桜田』はいつも頑張ってるだろう。だから
たまには息抜きでもしたらどうかな~って思ってさ……」
 俺は慌てふためく。
「う~ん?」
 彼女は考え込む。
「べ、別に嫌ならいいんだけど……」
「いいよ、行こ」
「そうだよな……やっぱ無理だよ……ってえっ? いいの?」
「うん」
 俺は予想外の返事に動揺する。
「それでどこに連れて行ってくれるの?」
「えっ? それは、えっ~と……当日のお楽しみって事で」
「えっ~どこに行くか知りたいな~」
 彼女は甘えた声で聞いてくる。
「だ~め!」
「う~、まっ、いっか」
 彼女は不満そうな顔をしている。
「そ、それじゃ今度の週末でどう?」
「うん、いいよ」
「そっか……それじゃ今度の日曜に駅にある大時計の前十時でどう?」
「うん、分かった。それじゃ楽しみにしてるね」
 そして俺は彼女とデートの約束をし彼女と別れた。
「やっべ~、俺デートなんかした事ねえから何すればいいか全然分かんねえぞ! どうす
んだ?」
 俺は何をしていいか分からないので、とりあえず本屋で情報収集するために本屋へと向
かった。

「う~ん? どれがいいかな?」
 俺はデートに関する本棚の前でどれをかえばいいのか悩んでいた。
「こんなに種類があるのかよ! 一体どれを買えばいいんだ?」
「『ガネ』さん! こんな所で一体何やってんすっか?」
「おわ~~!」
 俺は不意に声を掛けられ、驚きそして持っていた本を咄嗟に後ろに隠した。
「何だ『ダビデ』か、驚かすなよ!」
「いや、驚いたのはこっちすっよ! ところで『ガネ』さんこそこんなところで何を見て
たんすか?」
「えっ、俺? 俺が見てたのはえ~っと、そう、これだよ。これを買いに来たんだよ!」
そう言って俺は近くに置いてあった本を『ダビデ』に見せる。
「筋肉の付き方初級編? 『ガネ』さん、こんな本を買いに来たんすか?」
「あ、あぁ、そうだよ。悪いか?」
「いや、別に悪くはないすっけど……」
「そう言うお前は何買いに来たんだよ?」
「俺っすか? 俺は今週発売の漫画を買いに来たんすっけど」
「あぁ、そうかよ。それじゃ、俺は忙しいから、それじゃあな」
 そう言って俺は後ろに隠していたデートに関する本を下にし、筋肉のつけ方という本を
上にし、レジに持っていった。
「ありがとうございました」
 そして俺は足早に家に帰った。

 そして俺は部屋に着き、そこで買ってきた本を開けた。
「ふう~、何で俺はこんな本を買ったんだ? ただでさえ金がねえっていうのに……」
 そ言って俺は筋肉のつけ初級編という本を、封も開けずに本棚に直す。そして俺は初め
てのデート編という本を端から端まで読んだ。
「ふむふむ、なるほど。最初はこうすればいいのか」
 そして俺は眠れぬ夜を過ごした。

 そして次の日、俺は彼女と待ち合わせをしている大時計に向かった。彼女は集合十分前
にも関わらず、彼女はすでに大時計の前で俺を待っていた。
「ごめん、遅れたか?」
「あっ、やっと来た。さっきから私、色々な人にナンパされて大変だったんだから」
「本当にごめん!」
 俺は深々と彼女にお辞儀する!
「なあ~んてね、ウソ、ウソ! 私なんかナンパする変わった人なんていないって。それ
に『白金』君は時間通りに来たんだから気にしないで。私が早く来すぎただけなんだから
そんなに気にしなくていいよ」
(いや、普通に可愛いんだから危ないだろう!)
「ん? どうかした?」
「あっ、いや、何でもねえ! 今度からは気をつけるよ!」
「もう、気にしなくていいって言ってるのに、それじゃ、早く行こ?」
 そう言って彼女は俺の手を引く。
「えっ、あっ、ちょ……」
(うわ~! 『桜田』の手って滅茶苦茶柔らけえ! って去れ、煩悩!)
「ところで今日はどこに連れて行ってくれるの?」
「それは着いてからのお楽しみ♪」
 そして俺は彼女を『動物園』に連れて行った!

「あっ、見て、見て、キリンさんだよ! 首なが~い!」
「そ、そうだな……」
「あっ、あっちには熊さんがいる! 格好いい! けど何かぬいぐるみとは違うね?」
 彼女はキョトンとしている。
「そうだな……」
「あっ、あっちにはお猿さんの親子がいる! 可愛いね!」
「そうだな……」
(って何で俺はさっきから同じ事しか言ってねえんだ? もっと気の利いた事は言えねえ
のか? これじゃ、予習した意味がねえじゃねえか)
「あっ、あっちでふれあい広場をやってるって! 行ってみよ?」
「あ、あぁ……」
 俺達は近くでやっているふれあい広場に向かった!

「きゃ~、見てこの子。凄っく可愛い!」
 そう言って彼女はウサギを抱きかかえる。
(うっ! って言うか『桜田』の方が何倍も可愛いって! って何で直接本人に言えねえ
んだ? 俺は?)
「そ、それよりも……」
「ん? なあに?」
「それよりも……」
「それよりも?」
「き、き、き……」
「き?」
(言え! 言うんだ! 『春人』! 君の方が何倍も可愛いって)
「き、今日は晴れて良かったな?」
「うん、そうだね!」
 彼女は満面の笑みで答える。
(くう~、我ながら情けねえ~)
 そして俺達は何の進展もないまま、ふれあい広場を後にし、お土産やへと向かった!

「うわ~、いっぱい種類があるね?」
「そ、そうだな……」
 俺は相変わらずだった。店の中には動物関連のグッズや動物たちの餌や、お饅頭などの
お土産、動物の形をしたキーホルダー等、様々なものが並んでいる。
「ここにはキーホルダーが置いてあるのか。おっ!」
「どうしたの? 何か珍しい物でもあった?」
「いや、そうじゃなくて懐かしいものが置いてあるなあって」
「何? 懐かしい物って?」
「ほら、これだよ!」
そう言って俺は彼女に『ミサンガ』を見せる。
「これ知ってるか? この『ミサンガ』が切れたら願い事叶うってあったじゃんか?」
「うん、知ってる。そういえば、あったね」
「俺、小学校の時に買って貰った『ミサンガ』まだ切れてねえんだよな」
 そう言って俺は腕についてる『ミサンガ』を見る。
「そうなんだ……。あっ、じゃあ、こうしない? 私も『ミサンガ』をつけるからどっち
が先に切れるか勝負しない?」
「えっ? ま、まあ、別にいいけどよ。それより『ミサンガ』持ってるの?」
「ここで買うの!」
 そう言って彼女は吊ってある『ミサンガ』を手に取る。
「あっ、じゃあそれ俺が勝ってやるよ」
「えっ、いいよ。そんな悪いし……」
「いいから、いいから」
 そう言って俺は彼女が持っていた『ミサンガ』を持ってレジに行く。