そして最後のお話は、一度も恋愛をした事の無い男のが勘違いから始まる恋のお話。
あなたは勘違いから始まる『恋』がある事を知っていますか? この物語はごく普通
の生徒の勘違いから始まる『恋』の話である。あなたも素敵な恋をして見ませんか?

「お……俺と付き合ってください!」
『男子生徒』は深々とお辞儀をし、手を差し出し、そう言った。
「えっ? あたしと?」
そう言って、『女生徒』はこちらを向く。
「は……はい! お……俺……俺……初めて会った時から……あ……あなた……に……
ひ……一目惚れしたんです……」
「そうなんだ?」
「は……はい……」
「う~ん……」
そう言って『女子生徒』は顎に手を置き考え込んでいる……。
「いいよ……。別に付き合って上げても……」
そう言って『女生徒』はニコッと笑ってそう言った。
「まっ……まじで? 俺、すっ~げぇ~うれしい~!」
「そう? それじゃ、これからよろしく!」
そう言って『女子生徒』は『男子生徒』の手を取り合う。
「こちらこそ、よろしくお願いします!」
(やった~! これで俺にもようやく念願の『彼女』ができたぜ!)
そう言って俺はゆっくりと顔を上げる。
(ん? あれ? どうなってんだ? これ?)
そう言って俺はこれまでの経緯(いきさつ)をゆっくりと思い出して見た。

俺の名前は『草(くさ)凪(なぎ) 亮(りょう)』! まあどこにでもいる普通の『高校生』である。『髪』の
色も黒で短髪だし、身長は百六十六センチメートルの男性のごく普通の身長で、体重も
五十二キロで、顔もどちらかと言うと『平均顔』と言うまさに日本男子の平均である。
そして俺はここ『恋ヶ浜(こいがはま)学園(がくえん)』に通う普通科の学生である。俺は今、重大な局面に立っ
ている。それは同じクラスでマドンナの『河合(かわい) 理奈(りな)』と、どうしたら付き合えるのか
悩んでいた……。
「実は二人に相談があるんだ……」
「何ですか? 相談って?」
こいつは俺の『お隣さん』で一つ下の『新月(しんげつ) 葵(あおい)』! 髪の色は『銀髪』で短髪、顔も
整っており、身長も約百八十センチメートルくらいはあると思う……。まあ、どちらかと
言うと……俺とは『真逆』で『イケメン』部類に入ると思う……。
「そうだね~『草凪』君が僕達に相談するなんて珍しいね! で一体何の相談なの?」
こいつは俺の『小学校』からの『友達』の『藤堂(とうどう) 棗(なつめ)』髪の色は『金髪』で逆立ててお
り、まあ身長は約百七十二センチメートルくらいで、顔は取り立てて格好いいわけではな
くかといって不細工でもなく、しいていえば『普通』よりやや上くらいの顔だとである。
俺はなかなか『悩み事』を打ち明けられなかった……。
「もったいぶってないでさ、早くいいなよ?」
そう言って『棗』は俺をせかす!
「それは……」
「あっ! もしかして……『草凪』君の『悩み事』って……『恋』の相談とか?」
『棗』は俺がなかなか『相談事』を打ち明けないので、自分から俺の『悩み事』を推理
して答える!
「まさか?」
『葵』は半信半疑で答える!
「!?」
俺はずばり『棗』に自分の『悩み事』を当てられ、驚く!
「ほら、やっぱり…そうなんでしょう?」
「……」
俺はコクリとうなずく!
「マジで?」
「まあ、まあ……それで誰の事が『好き』なの? 百戦錬磨の僕に言ってみなって?」
「そうだっけ?」
『葵』が半信半疑で聞き返す……。
「そうなの……」
『棗』が反論する……。
「僕のことは置いといて……今は『草凪』君は誰の事が『好き』になったの?」
「す……好きになったっていうか、ちょっと『いいな』って思っただけだって……」
「まあ、まあ……いいから、いいから……で? 誰のことが気になってるの? 『僕達』
に話してみなって、ちゃんと『アドバイス』するからさ……」
「本当かな?」
俺は半信半疑だった……。
「本当だって! ねえ、『新月』君!」
「ん? まあね……」
ポツリと答える……。
「ね! で、誰の事が気になってるの?」
「それは……」
そして俺は、静かに答える…。
「……いさん……」
俺は小声で答える……。
「え?」
「だから……『……あい』さん……」
「あ……あのさ……もう少し大きな声で言ってくれない?」
「だから俺がいいなって思った人は……『河合』さん何だって……」
「……」
「……」
二人とも黙ったままだった……。
「って、何とか言ってくれよ……?」
「あ……ごめん、ごめん……。ちょっとビックリしちゃって……」
「どうせ『似合わない』とか思ってるんだろう?」
俺はふてくされながら答える!
「違うってば……。それよりもやっぱり『草凪』君は『河合さん』の事が『好き』だった
んだね?」
「だから……『好き』っていうか……『気になった』だけなんだって……」
「わかったって……」
「ったく……本当にわかってんのかな?」
俺は不満そうに答える!
「『河合さん』はもの凄く可愛いから『草凪』君が惹かれるのわかるよ……。ね! 『新
月』君!」
「……」
『葵』は黙ったままだった……。
「『葵』君?」
「あのさ……一つ聞いていい?」
「何、何?」
「『河合』って誰?」
「……」
「……」
俺達は黙ってしまった…。
「ぼ……僕が説明するよ……。『新月』君は『入学』したばかりだから知らないだろうけ
ど『河合さん』と言う人は学校内では『顔』が可愛いくて『ルックス』はいいし『性格』
もいい人だから、男子の間では結構人気がある子なんだよ!」
「……それで?」
「え~っと、けれどなんていうか『お嬢様育ち』だから皆ちょっと声をかけづらいから、
まだ、誰とも付き合ってないって言う事らしいよ?」
「……『亮』はそういう子が『好き』なんだ?」
「ばっ……だから……『好き』っていうか……ちょっと『気になった』だけだよ……」
「ふう~ん!」
「それで、それで? 『草凪』君はどうやって『河合さん』の事が気になったの?」
「それは……」
そして俺は『河合さん』との経緯を話した……。
「要約すると、野球部が打ったボールが『河合さん』目掛けて飛んできた! そして『草
凪』君はそれを見て『河合さん』を助けようとして、ボールが頭に直撃した!」
「あぁ……」
「そして、その時、『河合さん』が『草凪』君を介抱してくれた! その時、『草凪』君
は『河合さん』の事を『好き』になった! って事でいいんだよね?」
「その通りだ!」
「で、どうするの?」
「へっ? どうするって?」
俺は驚いて答える……。
「その、『河合』って人の事『好き』になったんだろう?」
「えっ? あ……あぁ……まあ……」
「だったらやる事は一つしかないだろう!」
「やる事って?」
『葵』は俺の目を見て答える!
「『告白』するんだよ!」
「こ……『告白』――!」
俺は取り乱して答える!
「まあ、それしかないよね……」
「ち、ちょっと待てよ……い、いきなりそんな事言われても……こ……心の準備が……」
俺は動揺して答える……。
「何言ってるのさ……。『告白』しない事には何にも始まらないだろう?」
「そ……そんな事……き……急に……い……言われても……」
「そう、そう、さっさと『告白』して、さっさと『振られて』来なよ!」
「いや、『振られる』と決まったわけじゃ……」
「じゃ、『藤堂』は『亮』が『その人』と付き合えると本気で思ってんの?」
「ん~? 相手はあの『河合さん』だしね?」
「あのな~!」
俺は少し怒って答える!
「あっ! ごめん、ごめん!」
『棗』が俺に謝る!
「ったく……真面目に相談に乗る気あるのかよ?」
「もちろんだよ! ね! 『新月』君?」
「当然だろ! 相談に乗ってるからこそ、ちゃんと『アドバイス』してるんだろう!」
「だよね~! やっぱりさ『草凪』君が『告白』しなきゃ何も始まらないと思うよ?」
「ん~? 『告白』か~?」
俺は少し悩んで答える……。
「まあでも、すぐには無理だろうからさ『タイミング』を見計らってしてみよう!」
「大丈夫かな……?」
「大丈夫かどうかはわからないけれど、ちゃんと僕達がサポートするって! ね! 『新
月』君?」
「まあ、しょうがないか……」
「二人共、ありがとう……」
そう言って俺は、二人にお礼を言う……。

そして、翌日……。
「よう! 『葵』! 一緒に学校に行こうぜ!」
「何で?」
「何でって事はねえだろう……。隣同士なんだしさ……。一緒に行こうぜ!」
「別に、いいけど……」

俺達が『学校』に着くと、クラス分け発表がされていた…。
「あっ! クラス分けが発表されている!」
「僕は先日『入学式』の日に発表されましたけどね……」
「あっ、そうか……。『葵』は昨日がクラス分けだったのか……? それで、俺は誰と一
緒のクラスになったんだ?」
「『くっ~さ~なぎ~く~ん』!」
ガバ! 背後から『棗』が俺の首を絞める!
「何だ! 『藤堂』か……」
俺はポツリと答える!
「つれないな~! 折角、いい情報を教えてあげようと思ったのに~?」
「何だよ? いい情報って?」
「どうせたいした情報じゃないんでしょう?」
「ふふ~ん! それはどうかな?」
『棗』が意地悪そうに答える!
「もったいぶってないで教えろよ?」
「では……まず『草凪』君! 僕と一緒のクラスになったよ!」
「それがいい情報?」
「だから言ったでしょう? あんまりたいした情報じゃないって……」
『葵』が冷たい口調で答える!
「まあ、これもいい情報だけど……もっと、とっておきの情報があります!」
「何だよ? とっておきの情報って?」
「どうせまた、たいした情報じゃないですよ?」
「それでは……発表します……。なんと僕達は……『河合さん』と、一緒のクラスになり
ました……」
「うお~~! マジかよ~~?」
俺は興奮して答える!
「これはもう、『運命』としかいえないよね!」
「ほら、やっぱり、たいした情報じゃなかったね!」
『葵』がポツリと答える!
「そんなことないよ! これで『草凪』君はいつでも『河合さん』に『告白』できるよう
になったんだしね!」
「う~ん! 『告白』か~?」
「まあ、まあ、そう焦らなくても、『タイミング』を見計らって『告白』すればいいんじ
ゃない?」
「そ……そうか……?」
「それに、考えてもみなよ?」
「何を?」
「席順は『あいうえお順』で決まるんだから『草凪』君の『く』と『河合さん』の『か』
で、一緒の『か』行だから、『草凪』君の隣の席になるかもしれないよ?」
「そ……そうか……?」
そう言って俺は『妄想』し始める……。

「あっ……」
『河合さん』が消しゴムを落とす!
「大丈夫かい?」
そう言ってさっそうと『河合さん』の消しゴムを拾い上げる!