「それより『橘』、今日浴衣着てたんだな」
「えっ、気づいた? ふふ~んで、どう? 似合ってる?」
「うん、凄く可愛い!」
俺は満面の笑みで答える。
「そ、そう……あ、ありがとう……」
彼女は頬を赤らめる。
「それじゃどこから見て回ろうか?」
「ん~、それじゃとりあえず神社をお参りしてから一通り見よ」
「分かった」
そして俺達は神社でお参りを済ませた後、夜店をぶらぶら見て回る。
「お~、一杯あんな。何か食べる? それとも何かやる?」
「慌てないの! ゆっくり見て回ってから決めればいいでしょ。それにそんなに張り切っ
てお金大丈夫なの?」
彼女は不安そうに尋ねる。
「大丈夫だって! お小遣い貰ったとこなんだからさ。ど~んと俺に任せろって」
そう言って俺は胸を叩く。
「全部使わなくたっていいてっば。あんまり無駄遣いしちゃ駄目だよ」
「分かってるって。おっ、あっちに金魚救いの店がある。なあ、やってみようぜ」
「本当に分かってんのかな?」
そして俺達は金魚救いの店に行く。
「よ~し、見てろよ」
俺は張り切ってポイを水につけ、バシャバシャとする。するとポイはすぐに破けた。
「あ~、クソー、おっちゃん、もう一回!」
「あいよ!」
そして俺はもう一度挑戦するが、ポイはすぐに破れる。
「可笑しいな~? こんなはずじゃねんだけど……」
「あんたは使い方が荒いの! 私に任せて!」
そう言って彼女が金魚救いに挑戦する。
「いい? 金魚救いはねまず初めに狙う金魚を定めて、その金魚の泳ぎに合わせて、そっ
と水に入れ水平にし、後ろからスッと救うの」
ピチャ! すると金魚が釣れた。
「ほら、釣れた」
彼女は得意そうに俺に金魚を見せる。
「う~、俺だって。おっちゃん、もう一回!」
「もう止めときなって」
そう言って俺は彼女に強引に別の場所に連れて行かれる。俺は彼女に何とかいい所を見
せようと色々な場所を回るが、全てうまくいかなかった。
「可笑しいな~? こんなはずじゃないのに……今日はたまたま調子が悪かったんだ」
「はいはい、分かったって」
そして俺達がしばらく歩いてると、露天商を見つけた。露天商ではイヤリングなのでア
クセサリ―等を売っていた。
「なあ、どれが欲しい?」
「えっ? いいよ。私には似合わないって」
彼女は断る。
「いいから、いいから」
そう言って俺は一つの指輪を手に取る。
「これなんかいいんじゃない?」
「そんなに可愛いの私には似合わないって。それにそんなに小さいサイズじゃ入らないっ
て」
「いいから、いいから」
そして俺は持っている指輪を彼女の薬指にはめる。ところが指輪は彼女の指には入らな
かった。
「だから言ったのに……」
彼女は額に手を押さえ恥ずかしそうにする。
「可笑しいな~? 入ると思ったんだけどなあ~? あっ、いい事思いついた。」
そう言って俺は彼女の小指に指輪をはめる。
「ほた、入った」
「入ったって小指じゃ……」
「これ下さい!」
「はい、毎度!」
「ちょ……私欲しいなんて一言も……」
「俺があげたいの」
そして彼女は小指にはめられた指輪を見て微笑んでいる。
「ねえ『仁科』、あんた私に一目惚れしたって言ったけど、私のどこが好きになったの?
私美人でもないし、スタイルだってそんなによくないし、性格だってよくないよ」
「あぁ、そんな事。俺が『橘』の事好きになったのは二年になったばかりの頃、皆が一人
ずつ自己紹介するのがあったじゃん。その時俺が宇宙飛行士になりたいって言ったら皆笑
っただろう。俺みたいな馬鹿な奴にはなれっこないって。その時『橘』が言ってくれたん
だよな。『頑張ったらなれるかもしれない』って。その言葉を聞いて、俺凄っげえ、嬉し
くてさ、それで俺、『橘』の事好きになったんだ」
「それだけ?」
「それだけだけど何?」
「ぷっ……あははは……」
彼女は笑い出す。
「何? 俺、変な事言った?」
「ううん違うの。そうじゃなくて……。そっか……『仁科』は私の見た目に惚れたんじゃ
なくて私の言った事に惚れたのか?」
「何か変?」
「ううん、変じゃない。そっか私の内面を好きになってくれたのか。うんうん」
彼女は微笑む。
「ん?」
俺は彼女が何故微笑んでるのか分からない。
「大丈夫だよ『仁科』。あんたは馬鹿じゃない。だから自信持ちなって」
「お、おう……」
「それで、宇宙飛行士になるために今でも続けてる事あんの?」
「あぁ、ある! 何分息を止めてられるかやってんの」
俺は自信満々に答える。
「何それ? 何でそんな事やってんの?」
「何でってそりゃ、決まってんだろ。宇宙空間って空気がないんだぜ。だから宇宙に行っ
た時、困らねえようにやってんだ」
「前言撤回。やっぱあんたって馬鹿かも。いい、宇宙空間に行っても大丈夫なように、酸
素ボンベとかつんであんだから、酸素がなくなるって事はないの。分かった?」
彼女は呆れている。
「えぇー、そうなの? 知らなかった……」
「ちょっと考えれば分かりそうなもんでしょうが。大体息止めるっていっても、限度があ
んでしょうが」
「じゃあ俺がやってきた事は全部無駄だったって事か……」
俺はがっくりと肩を落とす。
「まあ、全部が無駄って事はないんだろうけど……ドンマイ」
そう言って彼女は俺の肩を軽く叩く。
「そうだよな……無駄じゃねえよな、よし」
俺は元気を取り戻す。
「前向きだね」
「それが俺の『座右の銘(めい)』だから」
「それ、何か使い方間違ってない?」
「まあ、いいじゃん細かい事はさ」
俺は笑って答える。
「なあ、俺達恋人同士になったんだかさ、これからは『橘』の事名前で呼んでいい?」
「えっ? 別にいいけど……」
「それじゃあさ、これからは俺の事も名前で呼んでよ?」
「今?」
「そう今。いいから俺の名前呼んでみてよ」
「た、『隆』……」
彼女は照れながら答える。
「にしし……」
ヒュードン! すると夜空で花火が打ちあがる。
「あっ、花火だ! 見に行こう『愛』!」
「あっ、ちょっと……」
俺は彼女と手を繋いで花火が見える場所に移動した。
「綺麗……」
彼女は夜空に浮かぶ花火を見てうっとりしている。
「真っ暗闇に浮かぶ綺麗な明かりだな。まるで『愛』みたいだ……」
「ば、バカ……」
彼女はそっぽを向く。
「にしし」
そして俺は彼女の手をそっと握る。そして俺はすかさず身構える。
「……あれ?」
俺は一瞬彼女に叩かれるかと思って身構えるが、彼女は顔を真っ赤にしている。それを
見て俺もつられて顔を真っ赤にする。そしてほどなくして花火が終わる。
「終わったな……」
「そうだね……あっ、もうこんな時間。ごめん私もう帰らなきゃ」
彼女は腕時計を見て慌てる。
「あっ、じゃ俺送ってくよ」
「いいって、子供じゃないんだし、それに私この後、親戚の家に寄ってかないといけない
から」
「分かった。それじゃあな」
「うん、又明日」
そして俺は彼女と別れた。
その後姿を見た時、俺は妙な違和感を覚えた。
もう二度と彼女に会えないような感覚を覚えた。
そして俺はこの日の事を深く後悔するようになる。
そして次の日、彼女は学校に来なかった……。
彼女は今まで一度も休んだ事がないので俺は彼女の事が心配になり、担任に何故彼女が
休んでるのか尋ねた。
「先生! 今日『愛』じゃなくて……『橘』、学校に来てないけど、休みなんですか?」
「あ~、『橘』さんは昨日交通事故に遭ったらしくて、今『恋ヶ浜中央病院』に入院して
て、しばらく学校はお休みするという連絡がありました」
「え~」
ザワザワと教室中がざわつく。ガタ。そして俺は勢いよく立ち上がり、教室を後にす
る。
「『仁科』君、どこに行くんですか?」
「腹痛いんで早退します」
「腹痛で早退って……あっ、ちょっと……」
そして俺は学校を飛び出し、『恋ヶ浜中央病院』に向かった。
事故に遭ったって、俺と別れた直後なのか? あの時俺が送ってれば……いや、考える
のはよそう……。まずは彼女が無事かどうか確かめなきゃ……。そう思って俺は、急いで
『恋ヶ浜中央病院』に走って行った。
そして俺は『恋ヶ浜中央病院』の受付前に着く。
「あ、あの……はあ、はあ……『橘 愛』さんの病室はどこですか?」
「え~っと、失礼ですが『橘』さんとはどのような関係ですか?」
「え~っと、はあ、はあ、く、クラスメイトです……」
「えっ~と『橘』さんは『二〇三号室』におります」
「『二〇三号室』ですね」
そして俺は彼女がいる『二〇三号室』に向かった。
「ここに『愛』が……」
俺は焦る気持を抑えながら、病室のドアを開ける。
「『愛』大丈夫か?」
ドアの向こうにいた彼女は頭と足に包帯をグルグル巻いている。
「えっ? 大丈夫だけど……」
「よ、良かった……」
俺はほっと胸を撫で下ろし、その場に座り込む。
「びっくりしたよ。事故に遭ったって聞いて……。まあ、無事な姿を見て安心したよ……
それに……」
「ねえ、あなた誰?」
彼女は不機嫌そうな顔をして尋ねる。
「何言ってんだよ『愛』? 俺だよ。『仁科 隆』だよ」
「? ? ?」
俺は彼女の態度に嫌な予感がした。そして彼女は目を凝らして俺を見る。
「私、あんたの事知らないんだけど?」
彼女は冷たく答える。
「『愛』、どうしたんだよ? 俺の事分からないのか?」
「だから、あんたと会うのは初めてだって言ってんでしょ」
彼女は少し怒っている。
「どうしたんだよ『愛』? 俺の事忘れちゃっとのか?」
「それにさっきから『愛』、『愛』って、なれなれしく呼ばないでくれる。大体私は……
うっ……」
彼女はベットの上で胸を押さえて倒れ込む。
「『愛』大丈夫か?」
俺は彼女に駆け寄る。
「……私に触らないで……」
彼女は俺の手を跳(は)ね除(の)ける。そしてその時、看護士が入ってくる。
「どうしました? 『橘』さん大丈夫ですか?」
そして看護士はナースコールを押す。そして数人の看護士が入ってきて、彼女を見る。
そして俺は病室から出される。
そして俺は近くにいた看護士さんに彼女の容態を尋ねる。
「彼女一体どういう状態なんですか?」
「彼女は今、面会謝絶よ」
「何があったんですか?」
「彼女が事故に遭った時、強く頭を打ったみたいで、ここ最近の記憶を失くしたみたいな
の」
「ここ最近の記憶を失くしたって、一体いつ頃の記憶を失くしたんですか?」
「そうね……詳しい事は分からないけど、失くした記憶はここ半年から一年って所じゃな
いかしら」
「えっ、気づいた? ふふ~んで、どう? 似合ってる?」
「うん、凄く可愛い!」
俺は満面の笑みで答える。
「そ、そう……あ、ありがとう……」
彼女は頬を赤らめる。
「それじゃどこから見て回ろうか?」
「ん~、それじゃとりあえず神社をお参りしてから一通り見よ」
「分かった」
そして俺達は神社でお参りを済ませた後、夜店をぶらぶら見て回る。
「お~、一杯あんな。何か食べる? それとも何かやる?」
「慌てないの! ゆっくり見て回ってから決めればいいでしょ。それにそんなに張り切っ
てお金大丈夫なの?」
彼女は不安そうに尋ねる。
「大丈夫だって! お小遣い貰ったとこなんだからさ。ど~んと俺に任せろって」
そう言って俺は胸を叩く。
「全部使わなくたっていいてっば。あんまり無駄遣いしちゃ駄目だよ」
「分かってるって。おっ、あっちに金魚救いの店がある。なあ、やってみようぜ」
「本当に分かってんのかな?」
そして俺達は金魚救いの店に行く。
「よ~し、見てろよ」
俺は張り切ってポイを水につけ、バシャバシャとする。するとポイはすぐに破けた。
「あ~、クソー、おっちゃん、もう一回!」
「あいよ!」
そして俺はもう一度挑戦するが、ポイはすぐに破れる。
「可笑しいな~? こんなはずじゃねんだけど……」
「あんたは使い方が荒いの! 私に任せて!」
そう言って彼女が金魚救いに挑戦する。
「いい? 金魚救いはねまず初めに狙う金魚を定めて、その金魚の泳ぎに合わせて、そっ
と水に入れ水平にし、後ろからスッと救うの」
ピチャ! すると金魚が釣れた。
「ほら、釣れた」
彼女は得意そうに俺に金魚を見せる。
「う~、俺だって。おっちゃん、もう一回!」
「もう止めときなって」
そう言って俺は彼女に強引に別の場所に連れて行かれる。俺は彼女に何とかいい所を見
せようと色々な場所を回るが、全てうまくいかなかった。
「可笑しいな~? こんなはずじゃないのに……今日はたまたま調子が悪かったんだ」
「はいはい、分かったって」
そして俺達がしばらく歩いてると、露天商を見つけた。露天商ではイヤリングなのでア
クセサリ―等を売っていた。
「なあ、どれが欲しい?」
「えっ? いいよ。私には似合わないって」
彼女は断る。
「いいから、いいから」
そう言って俺は一つの指輪を手に取る。
「これなんかいいんじゃない?」
「そんなに可愛いの私には似合わないって。それにそんなに小さいサイズじゃ入らないっ
て」
「いいから、いいから」
そして俺は持っている指輪を彼女の薬指にはめる。ところが指輪は彼女の指には入らな
かった。
「だから言ったのに……」
彼女は額に手を押さえ恥ずかしそうにする。
「可笑しいな~? 入ると思ったんだけどなあ~? あっ、いい事思いついた。」
そう言って俺は彼女の小指に指輪をはめる。
「ほた、入った」
「入ったって小指じゃ……」
「これ下さい!」
「はい、毎度!」
「ちょ……私欲しいなんて一言も……」
「俺があげたいの」
そして彼女は小指にはめられた指輪を見て微笑んでいる。
「ねえ『仁科』、あんた私に一目惚れしたって言ったけど、私のどこが好きになったの?
私美人でもないし、スタイルだってそんなによくないし、性格だってよくないよ」
「あぁ、そんな事。俺が『橘』の事好きになったのは二年になったばかりの頃、皆が一人
ずつ自己紹介するのがあったじゃん。その時俺が宇宙飛行士になりたいって言ったら皆笑
っただろう。俺みたいな馬鹿な奴にはなれっこないって。その時『橘』が言ってくれたん
だよな。『頑張ったらなれるかもしれない』って。その言葉を聞いて、俺凄っげえ、嬉し
くてさ、それで俺、『橘』の事好きになったんだ」
「それだけ?」
「それだけだけど何?」
「ぷっ……あははは……」
彼女は笑い出す。
「何? 俺、変な事言った?」
「ううん違うの。そうじゃなくて……。そっか……『仁科』は私の見た目に惚れたんじゃ
なくて私の言った事に惚れたのか?」
「何か変?」
「ううん、変じゃない。そっか私の内面を好きになってくれたのか。うんうん」
彼女は微笑む。
「ん?」
俺は彼女が何故微笑んでるのか分からない。
「大丈夫だよ『仁科』。あんたは馬鹿じゃない。だから自信持ちなって」
「お、おう……」
「それで、宇宙飛行士になるために今でも続けてる事あんの?」
「あぁ、ある! 何分息を止めてられるかやってんの」
俺は自信満々に答える。
「何それ? 何でそんな事やってんの?」
「何でってそりゃ、決まってんだろ。宇宙空間って空気がないんだぜ。だから宇宙に行っ
た時、困らねえようにやってんだ」
「前言撤回。やっぱあんたって馬鹿かも。いい、宇宙空間に行っても大丈夫なように、酸
素ボンベとかつんであんだから、酸素がなくなるって事はないの。分かった?」
彼女は呆れている。
「えぇー、そうなの? 知らなかった……」
「ちょっと考えれば分かりそうなもんでしょうが。大体息止めるっていっても、限度があ
んでしょうが」
「じゃあ俺がやってきた事は全部無駄だったって事か……」
俺はがっくりと肩を落とす。
「まあ、全部が無駄って事はないんだろうけど……ドンマイ」
そう言って彼女は俺の肩を軽く叩く。
「そうだよな……無駄じゃねえよな、よし」
俺は元気を取り戻す。
「前向きだね」
「それが俺の『座右の銘(めい)』だから」
「それ、何か使い方間違ってない?」
「まあ、いいじゃん細かい事はさ」
俺は笑って答える。
「なあ、俺達恋人同士になったんだかさ、これからは『橘』の事名前で呼んでいい?」
「えっ? 別にいいけど……」
「それじゃあさ、これからは俺の事も名前で呼んでよ?」
「今?」
「そう今。いいから俺の名前呼んでみてよ」
「た、『隆』……」
彼女は照れながら答える。
「にしし……」
ヒュードン! すると夜空で花火が打ちあがる。
「あっ、花火だ! 見に行こう『愛』!」
「あっ、ちょっと……」
俺は彼女と手を繋いで花火が見える場所に移動した。
「綺麗……」
彼女は夜空に浮かぶ花火を見てうっとりしている。
「真っ暗闇に浮かぶ綺麗な明かりだな。まるで『愛』みたいだ……」
「ば、バカ……」
彼女はそっぽを向く。
「にしし」
そして俺は彼女の手をそっと握る。そして俺はすかさず身構える。
「……あれ?」
俺は一瞬彼女に叩かれるかと思って身構えるが、彼女は顔を真っ赤にしている。それを
見て俺もつられて顔を真っ赤にする。そしてほどなくして花火が終わる。
「終わったな……」
「そうだね……あっ、もうこんな時間。ごめん私もう帰らなきゃ」
彼女は腕時計を見て慌てる。
「あっ、じゃ俺送ってくよ」
「いいって、子供じゃないんだし、それに私この後、親戚の家に寄ってかないといけない
から」
「分かった。それじゃあな」
「うん、又明日」
そして俺は彼女と別れた。
その後姿を見た時、俺は妙な違和感を覚えた。
もう二度と彼女に会えないような感覚を覚えた。
そして俺はこの日の事を深く後悔するようになる。
そして次の日、彼女は学校に来なかった……。
彼女は今まで一度も休んだ事がないので俺は彼女の事が心配になり、担任に何故彼女が
休んでるのか尋ねた。
「先生! 今日『愛』じゃなくて……『橘』、学校に来てないけど、休みなんですか?」
「あ~、『橘』さんは昨日交通事故に遭ったらしくて、今『恋ヶ浜中央病院』に入院して
て、しばらく学校はお休みするという連絡がありました」
「え~」
ザワザワと教室中がざわつく。ガタ。そして俺は勢いよく立ち上がり、教室を後にす
る。
「『仁科』君、どこに行くんですか?」
「腹痛いんで早退します」
「腹痛で早退って……あっ、ちょっと……」
そして俺は学校を飛び出し、『恋ヶ浜中央病院』に向かった。
事故に遭ったって、俺と別れた直後なのか? あの時俺が送ってれば……いや、考える
のはよそう……。まずは彼女が無事かどうか確かめなきゃ……。そう思って俺は、急いで
『恋ヶ浜中央病院』に走って行った。
そして俺は『恋ヶ浜中央病院』の受付前に着く。
「あ、あの……はあ、はあ……『橘 愛』さんの病室はどこですか?」
「え~っと、失礼ですが『橘』さんとはどのような関係ですか?」
「え~っと、はあ、はあ、く、クラスメイトです……」
「えっ~と『橘』さんは『二〇三号室』におります」
「『二〇三号室』ですね」
そして俺は彼女がいる『二〇三号室』に向かった。
「ここに『愛』が……」
俺は焦る気持を抑えながら、病室のドアを開ける。
「『愛』大丈夫か?」
ドアの向こうにいた彼女は頭と足に包帯をグルグル巻いている。
「えっ? 大丈夫だけど……」
「よ、良かった……」
俺はほっと胸を撫で下ろし、その場に座り込む。
「びっくりしたよ。事故に遭ったって聞いて……。まあ、無事な姿を見て安心したよ……
それに……」
「ねえ、あなた誰?」
彼女は不機嫌そうな顔をして尋ねる。
「何言ってんだよ『愛』? 俺だよ。『仁科 隆』だよ」
「? ? ?」
俺は彼女の態度に嫌な予感がした。そして彼女は目を凝らして俺を見る。
「私、あんたの事知らないんだけど?」
彼女は冷たく答える。
「『愛』、どうしたんだよ? 俺の事分からないのか?」
「だから、あんたと会うのは初めてだって言ってんでしょ」
彼女は少し怒っている。
「どうしたんだよ『愛』? 俺の事忘れちゃっとのか?」
「それにさっきから『愛』、『愛』って、なれなれしく呼ばないでくれる。大体私は……
うっ……」
彼女はベットの上で胸を押さえて倒れ込む。
「『愛』大丈夫か?」
俺は彼女に駆け寄る。
「……私に触らないで……」
彼女は俺の手を跳(は)ね除(の)ける。そしてその時、看護士が入ってくる。
「どうしました? 『橘』さん大丈夫ですか?」
そして看護士はナースコールを押す。そして数人の看護士が入ってきて、彼女を見る。
そして俺は病室から出される。
そして俺は近くにいた看護士さんに彼女の容態を尋ねる。
「彼女一体どういう状態なんですか?」
「彼女は今、面会謝絶よ」
「何があったんですか?」
「彼女が事故に遭った時、強く頭を打ったみたいで、ここ最近の記憶を失くしたみたいな
の」
「ここ最近の記憶を失くしたって、一体いつ頃の記憶を失くしたんですか?」
「そうね……詳しい事は分からないけど、失くした記憶はここ半年から一年って所じゃな
いかしら」
