不器用彼氏・彼女

「ちょっと私の後ろ隠れないで!」
「いいだろ。『橘』が入ろうって言ったんだからさ」
「全く……」
 俺は彼女の背中に隠れて、彼女の後をついて行く。そしてガタッという音がなる。
「ギャ~、出た!」
「何も出てないわよ! ただ物音がしただけ」
 そして井戸の中から人が出てくる。
「ギャ~、出た! もう嫌だ~!」
 そう言って俺は彼女の手を取って出口に向かって走る。
「ち、ちょっと……」
 そして俺は出口付近で転ぶ。
「うわ~、誰かに足つかまれた!」
 俺は慌てふためく。
「落ち着きなって。ここの出っ張りにつまづいただけだって」
 そして俺達は無事お化け屋敷を出る。
「ふう~、怖かった……」
「あんたにも苦手なものがあったんだね」
「俺、昔からお化けとか幽霊とか苦手なの」
「ふふ、そっか」
 彼女は微笑む。

そして俺達は観覧車前に出る。
「なあ、観覧車に乗らねえか?」
「何でそうなるの?」
「だってこの前来た時、観覧車は又、来た時に乗ればいいって言ったじゃんか」
「あぁ……そんな事言ってたっけ……」
「なっ、いいだろ。乗ろうぜ?」
 俺は駄々をこねる。
「はい、はい、分かった、分かった」
 彼女は渋々観覧車に乗った。

「なあ『橘』! 外見てみろよ? 凄っげえ綺麗だぜ」
「はあ~、何で乗ったんだろ私?」
 彼女は観覧車に乗った事を後悔している。
「ここからだと、町全体が見えるぜ。おっ、あれ俺ン家かな? あっ、あそこに俺達が通
ってる学校が見えるぜ」
 そして彼女はゆっくりと窓から外を見る。
「……」
「ん? どうしたんだよ『橘』? あっ、そっか『橘』って高い所苦手だったんだよな。
観覧車に乗っても平気だったのか?」
「このくらいの高さ……平気だよ……」
 彼女は強がる。
「そっか。もし怖かったらさ、なるべく外を見ないようにしたらいいよ。着いたら教えて
やるからさ」
「平気だって……」
 ガタン! そして頂上付近で大きく揺れる。
「きゃ、何?」
その拍子に彼女は立ち上がり、体制を崩す。そして俺は彼女が倒れないように彼女を支
える。
「大丈夫か?」
「う、うん……平気だけど……」
 そしてほんの一瞬彼女と目が合う。
「もしかして、このまま止まちゃたりしないよね?」
「そんなわけないだろ。観覧車って一回頂上で大きく揺れて、それからゆっくりと、下に
降りて行くんだぜ」
「そうなんだ……」
そして俺は彼女を座席にゆっくりと座らせる。
「優しいんだね……」
「ん? 何か言った?」
「あのさ……あんたに話したい事があるんだけど聞いてくれる?」
彼女は真剣な眼差しで俺を見つめる。
「何?」
「実はあたしん家、私が小さい時両親が別れて、今は母親と二人暮しなの」
「へえ~」
「離婚の原因は、父が浮気して他に好きな人が出来たって言って、家を出たの。私と母と
二人暮らしで、母は一人で私を育ててくれたの。だから男の人が信用できなくて……『仁
科』の事、悪い人じゃないって分かってるんだけど、信用出来なくて……。だからあんた
が私の事を好きって言ってくれても、本当に私の事が好きなのかどうか信用出来なくて、
あんたにはいつも辛(つら)く当たって……」
「待つよ」
「えっ?」
「俺さ、『橘』が俺の事信じてくれるまで、いつまでも待つよ」
 俺は胸を張って答える。
「『仁科』……ありがとう……私、あんたの事……」
 ガタン! そして観覧車が一回りして終わりを告げる。
「ほら」
 俺は先に観覧車を降り、彼女に手を差し出す。
「ありがとう……」
 そして閉館の合図がなる。
「あっ、もう閉園なんだ……」
「帰ろうぜ」
「うん……そうだね……」
 そして俺達はアニマルランドを出る。

 そして俺は彼女を家に送る。その途中、夜空に輝く星を見つける。
「あっ、一番星」
 俺は輝く星を指差す。
「あれは一番星じゃなくて北極星。道に迷った時は、あの星を見て方角を知る事が出来る
の」
「目印にするって事は、一番輝いて目立つからだろ?」
「そうだけど……」
「やっぱ、一番星じゃねえか」
「あんたって人は……」

 そして彼女家に着く。
「送ってくれてありがとう……」
「へへ、気にすんなって」
「あのね『仁科』」
「ん?」
「……何でもない……。又、明日ね」
「おう、又、明日」
 こうして俺は彼女と別れた。

 俺がいつものように彼女に花を持っていくと、彼女が俺に話しかけてきた。
「ねえ『仁科』。今日の放課後って暇?」
「暇だけど何で?」
「伝えたい事があるんだけど、放課後教室に来てくれる?」
「伝えたい事って?」
「じゃ」
 そう言って彼女は走り去った。
「俺に伝えたい事って何だろう?」

 そして俺はその日の放課後、教室に向かった。
「何々? 俺に用事あるってどんな用? もしかして俺と付き合ってくれる気になったと
か?」
「あんたってさ、私に一目惚れしたんだよね?」
 彼女いつになく真剣な面持ちで話しかける。
「あぁ、そうだよ」
「だったらさ私の事どれくらい好きなの?」
「う~ん? そうだな~?」
 俺は考え込む。
「あっ、俺は『橘』の事こんくらい好き」
 そう言って俺は目一杯ジャンプする。ゴン! その拍子に俺は天井に思いっきり頭をぶ
つける。
「っ痛ぇ~」
「ぷ……あははは……やっぱあんたって面白いわ。いいよあんたと付き合ってあげる」
 彼女は大笑いしながら答えた。
「えっ? 今なんて?」
「だからあんたと付き合ってあげるって言ったの」
「ま、マジで? 今のは冗談だったとか無しだぞ」
「冗談なんか言わないって。で、あんたの答えは?」
「もちろんOKだよ」
「それじゃ、よろしくね」
「あ、あぁ……」
 そして俺は彼女と握手する。
「そうだ! こっち来て」
 俺は喜びのあまり彼女の手を引いて屋上に向かう。

そして俺は屋上にある柵のところに行って叫ぶ。
「俺、『仁科 隆』は『橘 愛』とお付き合いさせてもらいます」
 とグラウンドに向かって大声で叫んだ!
「ちょ……やめなって」
 彼女は照れながら必死に俺を止める。
「やめな~い!」
「バカ!」
 ポカ! そう言って彼女は俺の頭にチョップを食らわす。
「ししし!」
 それでも俺は笑いが止まらなかった。こうして俺は彼女と付き合う事になった。そして
その事を俺は、いち早く『白金』に伝えると、『白金』は俺達を祝福してくれた。

 そして翌日の体育の授業前、俺はグラウンドで教室に向かって手を振る。
「『橘』ー!」
「どうしたの? 『仁科』?」
 彼女は教室の窓から身を乗り出す。
「俺の活躍見てくれよな?」
 そう言って俺は勢いよくバク転をする。ゴン! すると後ろにいた人と頭がぶつかる。
「っ痛ぇ~! おい『仁科』! 痛えだろうが!」
 後ろにいた男性は激怒している。
「うわ~、やば!」
 そして俺はグラウンドを突っ切る。
「『仁科』、ちゃんと周りを見なさい」
 彼女は窓越しに叫ぶ。
「ねえ『愛』、最近『仁科』君と仲良くない?」
「えっ? そ、そうかな?」
「怪しい……。白状しなさい」
 そう言って『花咲』は彼女をこそばす。
「分かった。言うよ。言うからやめて」
「それで?」
「実は私……『仁科』と付き合ったの……」
「えぇ~、『愛』、『仁科』君と付き合ったの~?」
 女生徒達は盛り上げる。
「し~、皆に聞こえるでしょ」
「ご、ごめん……。でも『愛』、『仁科』君の事全然興味なかったんじゃないの?」
「そうだったんだけど……あいつと会ってるとね、毎日が楽しいんだ……。それにね、あ
いつだったら信用できるんじゃないかなあと思って……」
「お惚気(のろけ)ですか? いいな~」
「そんなんじゃないって」
「いいな~。私も彼氏欲しいな~」
「だから違うんだって」
 そして彼女達も体育の授業に向かった。

そして彼女と付き合って二週間が過ぎた。
「よし、もうそろそろお小遣いも貯まってきたし、『橘』をどこかに誘いたいな~。どっ
かいい所ないかな?」
そう言って俺が学校での帰り道に一枚のポスターを見つける。
「これだ!」

 そして俺は翌日、彼女をデートに誘う。
「なあ『橘』、今度の日曜って空いてない?」
「何で?」
「今度の日曜さ、俺と縁日に行かない?」
「二人だけで?」
「ダメ?」
「いいよ、分かった。行こう」
「よし!」
 俺はガッツポーズをして喜ぶ。
「あんまり、はしゃぐなって」
「それじゃ、今度の日曜の夜六時に神社の前で集合な」
「うん、分かった」
 俺は彼女とデートの約束をする。

そして日曜日、待ち合わせ十分前に神社に到着する。すると彼女はすでに到着していた。
「遅い! 時間過ぎてる!」
「えっ? そんなはずねえよ! まだ約束の十分前だって」
 そう言って俺は彼女に自分のはめている腕時計を見せる。
「それ時間遅れてる。今六時五分」
 そう言って彼女は神社にある時計を指差す。
「あっ、本当だ! まっ、細かい事はいいじゃねえか」
「あんたがそれ言う?」
彼女は額に手を押さえる。