最初のお話は一度も恋愛をした事の無い男の子が不思議な体験をするお話。
俺の名は『白金(しろがね) 春人(はると)』! 見た目は筋肉質で、黒髪の短髪で髪を逆立てており、性格
は曲がった事は許せない。いわゆる真面目タイプである。俺は『恋ヶ浜学園』に通う二年生で陸上をやっている。そして部活の帰り道、不思議な少女と出会う。
「ふああ~、やっと終わった!」
 部活帰りに背伸びをして春人が答える。
「ん? あれは?」
 そう言って春人は橋の上から身を乗り出してる女性を見つける。その女性は髪が長く、
綺麗な茶色い色をしていて、瞳はパッチリとしており、肌は透き通るように白くスレンダ
ーな体の女性だ。
「おい、そんな所で何やってるんだ? 危ないぞ!」
「えっ?」
少女は俺の呼びかけに驚き、ふと俺のほうを見る。
「あっ……」
その瞬間、彼女は体制を崩し、橋から落ちそうになる。
「あ、危ねえ!」
 俺は彼女が橋から落ちる前に彼女を抱きかかえる!
「大丈夫か?」
「う、うん……ありがとう……」
 そして俺は我に帰る。俺は彼女を抱きかかえたままだという事を……。
「ご、ごめん……」
「ん? 何が?」
「そ、その……君に触れてしまって……」
「どうして謝るの? あなたは私を助けてくれたんだから、私の方こそお礼を言わなきゃ
いけないのに。ありがとう助けてくれて」
「えっ? いや、どういたしまして」
「……」
「……」
そしてしばらく沈黙が続き、俺が彼女に問いかける。
「ところで、こんな場所で何をやっていたの?」
「? ? ? う~ん? さあ?」
 彼女自身も何故ここにいるのか分かってないようだ。
「へっ?」
 俺はあっけに取られる。
「気づいたらここにいたの?」
「そ、そうなんだ」
(この子変わった子なのかな?)
「ところであなたは誰?」
「あっ、自己紹介がまだだったな。俺は『恋ヶ浜学園』に通う二年の『白金 春人』! 
君は?」
「私は『聖林女学院』に通う『桜田(さくらだ) 凪(なぎ)』!」
 彼女は元気よく答える。
「あ~、もうこんな時間! ごめんね、私帰らなきゃ!」
 彼女は腕時計を見て慌てる。
「えっ、あっ、ちょっ……」
「それじゃあね」
 そう言って彼女は帰って行った。
「何だったんだ? 一体?」
 そして俺も家に帰った。

そして次の日、俺は彼女の事が気になり、部活帰りに彼女と出会った橋のもとへ急いだ。
「はあ、はあ、いた……」
 そこには昨日出会った彼女が橋を見下ろしている。
「又、こんなところにいたのか?」
「あっ、えっ~と、確か……『白金』君?」
「何で又、この場所に来てんの?」
「あはは、それはね……実は私にも分からないんだ」
「どういう事?」
 俺は呆れながら答える。
「う~ん? 何て言ったらいいのかな? 実は私、最近の記憶がないんだよね」
 彼女は何事もないかのように答える。
「なっ、それって大変な事なんじゃ……。もしかして記憶喪失ってやつ?」
「ううん違うよ。記憶がないっていうのはここ一ヶ月くらいの記憶だけだから……。それ
より前の記憶はちゃんとあるから大丈夫だよ」
「そうなのか? っていやいや、一ヶ月でも記憶がないって事は大変な事だろ?」
「そんな事ないよ。生活する分には全く問題ないから」
 彼女は明るく答える。
「いやいや、そういう問題じゃねえだろう。まったく……放っとけねえな。あのさ、何か
困った事があるなら何でも聞くからさ」
「優しいんだね『白金』君は」
 彼女は満面の笑みで答える。
「べ、別にそんなんじゃ……」
 俺は顔を真っ赤にする。
「ところで『白金』君ってこんな遅い時間に帰ってくるって事は何か部活でもやってるの?」
「えっ? あ、あぁ……陸上で走り高跳びをやってる」
「へえ~、そうなんだ? 凄いね」
「いや、別に凄くはねえよ。それに君もこんな遅い時間にここにいるって事は君も何か部
活をやってるとか?」
「呼び捨てでいいよ」
「えっ?」
「名前」
「あ、あぁ……それじゃ『桜田』」
「うん。あっ、私が何でこんな遅い時間にここにいるのかって事だよね?  実は私も最
近まで陸上をやってたの。長距離の」
「やってた?」
「うん。私、事故に遭ってねその影響で走れなくなっちゃたの……」
「わ、悪い……。変なこと聞いて……」
「別に謝らなくてもいいよ」
「もしかして記憶がないのって事故の影響?」
「う~ん? そうだと思うけど覚えてなくてよく分からないんだ……」
「そっか……」
「それでリハビリのために、なるべく歩くようにしてるの」
「足は大丈夫なのか?」
「うん。歩くぶんには問題ないよ」
「そっか……」
俺はうつむき加減に答える。
「嫌だ、そんなに暗くならないで。私は全然大丈夫なんだから」
「はは、そうだよな……ごめん……」
 俺は小声で答える。
「だから謝らなくてもいいってば」
「そうだな……。あっ、そうだ! 又ここに来たら君に会えるかな?」
 俺は彼女に質問する。
「えっ? うん。多分いつもこのぐらいの時間にはいると思うけど……」
「それじゃあさ、又会いに来てもいいかな?」
「もちろんいいよ」
 彼女は力一杯答える。
「そっか……それじゃ、又会いに来るよ」
「うん! 待ってる」
 そして俺は彼女と別れた。そして俺は次の日も又次の日も彼女と会った。そして一週間
後の部活の時間。カランカラン! 俺はいつもなら軽く飛び越えていた走り高跳びのバー
を何度も地面に落としていた。
「『ガネ』さんどうしたんっすか? 今日は調子悪いみたいっすね?」
 こいつは俺の部活仲間の『周防(すおう) 大地(だいち)』。茶髪でロングヘアーで髪をオールバックにし
ており、又彫りの深い顔ででおまけにがたいもよく、ダビデ像に似てるから皆からは『ダ
ビデ』と呼ばれてる。
「何だ『ダビデ』か……」
「ってそれ、何気に酷くないすっか?」
「悪いな」
「いや、別にいいすっけど、それよりどうしたんすっか? 最近元気ないすっね?」