名前を教えてあげる。


慌てて拾おうとするが、ソファとテーブルの間が狭過ぎて、長身の順は身体がうまく入らない。


「点けたらいきなり始まっちゃった…すぐ消すから」


テーブルをどけ、ソファの下に手を伸ばすが、床との隙間が狭くてなかなか手が届かない。


順がリモコンを取るのに、四苦八苦している間中、密室になまめかしい女の声がBGMのように流れる。美緒は困惑しながらも、ソファに座ったまま目前にある女の痴態を見た。


女は、髪が長く若い。シーンが変わって、男の股間に顔を埋めていた。大きく開いた唇の先はぼかしがかかっている。

喘ぎ声の代わりに、粘膜がこすれる湿り気を帯びた卑猥な音がする。


それは、順にせがまれて時々やる行為と同じだった。


見たくない、と思うのに、美緒は目が離せなくなってしまう。

皆がやってるんだ、と思う。
さっき待合室にいたカップルも。


ふいに、画面が変わった。
お笑いタレントのアップが現れる。

能天気な朝のバラエティ番組。


リモコンをようやく拾った順が、チャンネルを変えたのだった。


美緒は、お預けを食らった気分になる。

何か汚らわしいものを見てしまった気でいたのに、そうではなかった。