名前を教えてあげる。



大人に咎められることなく、部屋に入るーーーそれが今日の第一の目標だった。
それは、なんとかクリアされた。


計算外だったのは、部屋は空いているらしいのに『準備中』とやらで、待合室で待たされたことだ。


手持ち無沙汰に、順と並んでソファに座っていると、20代半ばくらいのカップルがやってきて、一緒に待つ羽目になってしまった。

気まずい雰囲気が流れる(美緒はそう感じた)

顔を見られないように、美緒は頭を下げた。


前髪を弄るふりをして、カップルの様子を伺うと、眼鏡をかけた小肥りの男は、美緒のスカートから伸びる生足を無遠慮にじろじろと見ていた。

その不快な視線から身を守るように
美緒は、膝上丈のフレアスカートの裾を引っ張って、少しでも剥き出しの腿を隠そうと必死になった。


横にいる順は、というと長い脚を組み、カップルの存在など見えないかのように涼しい顔で携帯を弄っていた。


「こいつ、子供のくせにこんなとこ来やがって、高校生はうちで宿題してろ、みたいに言われてる気がして。なんだか疲れちゃった…」


「そっか。気付いてあげなくてごめん。席、替わってあげればよかった」