名前を教えてあげる。


身内が1人もいない美緒が、学園以外の場所で寝る機会などなかった。

同室の子たちは、時々、親や縁者との面会で外泊する。
たった1晩かそこらでも血の繋がった大人の庇護の元、自由を手にいれられるのだ。
美緒には羨ましい光景だった。


10時以降、好きなように出来る。

自分の好きなテレビが観られて、思い切り夜更かしが出来る。
それだけで嬉しくて仕方なかった。


今夜、美緒は真由子の家に泊まることになっていた。
順も友達の家に。


皆を騙しているのだけれど、罪悪感なんかこれっぽっちもなかった。





ラブホテルの室内は広かった。

壁紙をはじめ、インテリアは淡いベージュを基調としていて、清潔感があったけれど、中央にデンと置かれた真っ赤なシーツのキングサイズのベッドに美緒は圧倒されてしまった。


「いい部屋じゃん。サウナも付いてるってさ。レンジもある」


順はそう言いながら小さな冷蔵庫の前に跪き、買ったものを手際良く収めていく。


美緒は、ショルダーのポーチを掛けたまま、室内を点検するふりをする。

この場に及んでセックスをするためにわざわざこんな場所へ来た、ということが恥ずかしく、気後れしてしまっていた。