仕事は休みのはずなのに、光太郎の電話は何度かけても留守電だった。


「やんなっちゃうなあ…パチンコでもしてるのかな」


夜空の満点の星を見上げながら、美緒は溜め息を吐いた。


キラキラと輝く膨大な数の星たちは自己主張が強くて圧倒されてしまうけれど、ようやく慣れてきた。

ここ2,3日でぐっと冷え込むようになった夜。美緒の口元には白い息がまとわりつく。

早く恵理奈とお風呂に入らなくては。五右衛門は冷めにくいけれど、冷めてしまったら、薪をくべて追い焚きするしかないからひと苦労なのに。


「とりあえず、留守電にメッセージを吹き込もうかな…」



『あ、美緒だけど…突然だけど、驚かないで。
私達、国分村で暮らすことにしたよ。

借金の50万、お父さんが肩代わりしてくれることになったよ。そのお金、田中みどり先生に預けた。

あ、みどり先生のことは、前に話したと思うから知ってるよね?
養護施設の先生。

週が明けたら、みどり先生にこうちゃんの口座にお金を振り込んでもらうので、受け取って。

…で、そのお金はもう返さなくていいから。