名前を教えてあげる。




蘇る……苦い思い出。
凍えてしまった順の心。

万死に値する裏切り…


ポロリと美緒の涙が落ちると、恵理奈がひゅっ…と息を呑むようにして言葉を飲み込んだ。


「…恵理奈がね、大人になったら、この意味分かると思う…
本当にママ、最低最悪なことしちゃった…後悔してパパがいなくなった部屋で泣いてばかりいた。

でも、そんなママなのに、恵理奈は笑ってくれるの。元気出してって言ってるみたいに、もみじみたいなお手々でママの頭を撫でてくれるの。

いつまでも泣いていても仕方ない。前を向いて歩くしかない…
恵理奈が1歳になった夜、恵理奈の寝顔見てそう決意したの。

順がいなくても、頑張ってこの子を育てていこうって。
それが私の使命なんだって。

…今までパパは恵理奈が赤ちゃんの時に死んでお空の月になったって言ってたけど……それは、嘘なんだ。

ごめん。
パパは生きてる。
お医者様になる為の勉強をしている大学生なんだよ。
恵理奈を育てる為のお金も、ずっと支払ってくれてた。

別れることになったのはママが悪いからなんだけど、辛くてたまらなくて。
苦しみから逃れたくて、あさはかな考えだけど、順が死んだって思い込むことで、楽になりたかったんだ…

いつかは、ちゃんと話そうと思ってたけど…」