「姑さんが元気だった頃は、おはぎや手作りのお惣菜なんかも売ってたんだよ。この辺に何軒か家も建ってたけんね。
農家は田んぼの時期になると大忙しだけん、重宝されてたよ。
代替わりすると、皆、農家辞めて、街の方へいってしまうけん、こんなふうになっちゃったわ」
雅子は今日も化粧をしてない。着ているものも昨日とほぼ同じ感じで、地味なグレーのチュニックに黒いスラックス。
だから、歳の割に少し老けて見えるけれど、そんなことはどうでもいいことだ。雅子の明るい声と性格は、人を幸せにする。
美緒はすっかり雅子が大好きになっていた。
こんなお姉さんがいたらな……
と思う。
「あれ?美緒ちゃん、爪、どうしたの?綺麗にしてたのに?」
雅子は目ざとく、美緒の手を指差した。
「うん。落としちゃった。軍手してても泥が爪の間に入っちゃって汚いから」
美緒は店内の品物を物色しながら答えた。
お昼ご飯に五郎は、甘辛い汁の卵の入ったうどんを作ってくれた。
卵の黄身が苦手な美緒は少し躊躇ったけれど、せっかく五郎が作ってくれたのに、残すなんて出来ない。

