名前を教えてあげる。


「一緒に食おう!」


順は、勝手に空いている美緒の隣の席に腰を下ろして、コロッケをアチッといいながらつまんだ。


順のぽってりとした唇と油でてかる長い指が触れ合うのがなぜかエッチな感じに見えてしまい、美緒は胸がドキドキして、コロッケどころじゃなくなった。


「遠慮するなよ」

順は紙包みを美緒の方へ押しやる。


「…ありがとう」


心の片隅に湧く大きな幸福感と小さな安堵感。
てっきり、順に軽蔑されていると思い込んでいたから。


おととい、以前、シフトの交代を断った女生徒の1人、猪瀬アキが
『五百部美緒って、三田村学園の子なんだって。あそこってコジイン?でしょ?親がいないなんて悲惨だよね〜可哀想〜』
と美緒の方を見て、笑いながら順に言っているのが聞こえてしまった。


遠目だったけれど、一瞬、順の眉が歪んだ気がして、美緒にはそれがとてもショックだった。


ーーそんなこと、いちいち広めなくたっていいのに……


そんな陰口は慣れっこなはずなのに、その夜は布団の中で泣いてしまった。


順の曇った表情。
きっと、順は人が羨むような家庭で育ったのだろう。

それでなくては、あんなに柔らかな性格にはなれない。