茶髪の寡黙なロック少年だった哲平は、門限破りの問題児で有名人だった。謹慎を食らっても窓から抜け出す。


それでも、哲平は一目置かれた存在だった。面倒見の良い彼は時間があれば年下の子供達を集め、得意のサッカーを教えていた。

その教え方が的確で、地元の少年サッカーチームで活躍する三田村学園の子供が増え、スポーツ好きの園長を喜ばせた。

美緒も何度かサッカーを哲平に教わったことがあった。



「やっぱそうか。デカくなったなあ」

「やだ!哲平、どこ見てんの?」


感心したように頷く哲平の視線が、胸の当たりに注がれている気がして、美緒は両腕を前で交差させた。


「………はああっ
?ぶぁっかじゃねえ⁈」


哲平は、一瞬、目が点にしたあと、身体を仰け反らせて大笑いした。


すぐに昔みたいにお互い呼び捨てになる。


「うそうそ。冗談!哲平が教習所の先生なんて。
教えるのうまいからぴったりじゃん!」


「おっ、美緒、お前、世渡りうまくなったな」


外見はさほど変わらないのに、10代の頃の尖った部分がなくなり、人懐こい笑顔を見せる哲平に美緒はとても興味を持った。