高校に入学してしばらくの頃。
学校生活に馴染めなかった美緒は、一時期、保健室の常連だった。
気分が悪い、とか頭が痛いとか、適当な理由を付けて保健室のベッドで横になって寛いだ。
その時見ていた天井に似ていた。
保健室に行くようになった原因は、矢野愛子がいなくなったからだ。
三田村学園で、同い年で同室だった親友。
同じ高校に行こうと約束していたのに、愛子は中学卒業を目前に、突然退園することになった。
彼女の母親が再婚、愛子を引き取り、急遽相手の転勤先の長崎に行くのことになってしまった。
一緒の高校に通うのを楽しみにしていたから、ショックは大きかった。愛子は友達というよりは姉妹のような存在だった。
別れの日、美緒と愛子は抱き合って別れを惜しんだ。
『夏休みに絶対逢おうね』
約束したのに、美緒が3通、長崎に手紙を送っても愛子からの返事は1通もなかった。
当たり前だ。
すぐに、そう気付いた。
愛子は幸せな家族を手に入れた。
新しい土地で高校生になっている。
養護施設にいたことなんか、忘れたいに決まってる。
そこにいる子から手紙が着たら、迷惑以外の何物でもないということに。
村岡和彦………美緒の記憶は更に巡る。
初めて付き合った男の子の名前を思い出した。
……そうだ。

