名前を教えてあげる。



「殿方を陥れる最低のやり口よね…順のベイビーを生んだからって、このまま順と結婚できるなんて思わないで!」


クリスティンは、目を血走らせ、握りしめた拳を震わせて言う。


「さ、最低のやり口って?私が何したっていうの?」


なぜ目の前の女が怒っているのか、美緒には分からない。

クリスティンの剥き出しの感情に恐れをなして声が震えてしまうが、訊かずにはいられなかった。


「順は私の婚約者だったのよ?おばさまだって認めていた!
なのに、私がスイスへ行っている間、あんたが順を横取りしてしまった!

卑怯な手で誘惑して、既成事実を作って順が身動きできないようにしたのよ!」


クリスティンは、挑むように美緒の鼻先に自分の顔を近づけてきた。

反射的に美緒は 後ずさる。


「ま、待って….婚約者って、初耳なんだけど………いつ婚約したの?」


なんとかこの事態を落ち着かせようと、宥めるように訊いた。


「…小学校に上がる前の春」


クリスティンは、ぽっと顔を赤らめた。


……は?

素っ頓狂な声が出てしまいそうになるのを美緒は、かろうじて飲み込んだ。