陽射しはまだ強いけれど、時折吹く柔らかさを含んだ風がそれを和らげ、夏の終わりが確実に近づいている事を知らせる。
黄花コスモスが風に揺られる風景を見て、美緒はごく自然に腹に手を当てた。
(お花、綺麗だね…)
恵理奈に話しかけるのと同じに、心の中で、小さな命を愛おしむ。
自分から話がしたいと言ったくせに、クリスティンは無言のままマイペースに歩き、美緒が追いかける形になった。
何を考えているのか分からないクリスティンに美緒は次第に苛立ちを感じ始めた。
朝から、ずっと立ちっぱなしだった。
キッチンはあまり冷房が効かず、順の言うとおり買ってくれば済むクッキーを汗水たらして作っていたのだ。
木香薔薇に似たクリーム色の小さな花がたわわに咲くアーチの前で、クリスティンはようやく美緒の方を向いた。
「……あんた」
鋭いキツネ目できっと美緒を睨み付ける。なぜかその瞳は潤んでいて、今にも泣き出しそうに見えた。
「え?」
今日出会ったばかりの人間に、いきなり『あんた』と呼ばれた美緒はビックリして、棒立ちになった。

