名前を教えてあげる。




(な、なに?『良くって?』って…ここ芝居小屋かい?)


思わず、吹き出しそうになるのを堪えた。


「もちろん、いいわよ。クリスティン」


春香は目を細め、鷹揚に頷く。


「早咲きの秋薔薇が咲いてるかもしれないわ。
そうそう。害虫が枝に付いていないか見てきて頂戴。庭師が遅い夏休みなのよ。

薔薇って、目を離すとすぐに悪い虫やられてしまうの!
早めに駆除しないとね…」


クリスティンを慰めるように、その右頬にそっと触れた。


気が進まなかったけれど、初対面のクリスティンと2人きりで庭を散策するために外へ出た。


庭に出たのは初めてだった。

高校生の頃、何度も順の部屋を訪れていたのに、2階から庭を眺めた記憶がなかった。
それだけ、別のことーーパソコンやセックスに熱中していた、ということになる。


庭には、たくさんの草花が整然と植えられ、とんぼがあちこちで飛んでいた。

文句無しに手入れのゆきとどいた庭園だった。


美緒の知らない花もたくさん咲いていた。
かろうじて、サルビアとマリーゴールドとケイトウは分かった。

小学6年生の時、割り当てで園芸クラブに入らされて(しかも部長までやらされた)仕方なく移植ゴテを使い、花壇に植物を植えていたから。