順の声で目が覚めた。
「ん…」
美緒が布団から顔を出すと、白いTシャツにGパン姿の順が枕元に跪いていた。
コーヒーの良い香りが漂っている。
「…ハムエッグ作っておいたから食えよ。ガラスポットにコーヒー入ってる。
恵理奈は寝てる。明け方ミルクやって、オムツ替えたよ。
夕方から雨だって予報だから。
洗濯物、早く取り込みなよ」
いつもと変わらない眼差し。優しい口調。
わかった、と美緒が答えると、
順は立ち上がって背を向けた。
いってらっしゃい、と小さな声で美緒が言うと、順は立ち止まり、前を向いたまま言った。
「同意書……サインしたから。
印鑑は帰りに買ってくる。
次の診察、俺も一緒に行くよ…もちろんオペの時も」
言い終わると、慌ただしくスニーカーを履き、出て行った。
パタンとドアが閉まった後、布団から抜け出した美緒は、恵理奈の様子を見に行く。
小さな布団に寝かされた恵理奈は、アヒル柄の夏掛けを掛けて寝息を立てていた。
赤ん坊のくせにすっと通った鼻筋に閉じた瞼の密集したまつ毛。
誰が見ても恵理奈は父親似だ。
(恵理奈、ホント可愛い…)
安らかで無防備な寝顔を見て、我が子が愛しくなる。
美緒の口元が自然に緩んだ。

