名前を教えてあげる。



突っかかるように言った後、順を睨み付けた。


「イチャイチャなんかしてねえだろ!
そんな言い方するな!
俺は美緒の力になればって思ったんだ!」


さすがに順もムッとして言い返した。

穏やかな性格の順が眉を歪め、怒りを表す。


ーー本当は優しくなりたいのに……
順をこんな風にするのは、自分がいたらないせいだ…


謝りたいのに、なぜか口からは正反対の言葉が出てしまう。


「余計なことしないで!頼んでもないのにさ!私、恵理奈と先に帰るから!」


「美緒!せっかくの休みだぜ。
1人で電車なんか大変だろ?意地を張るのはよせよ。俺が押すから…」


バギーの押し手を取ろうとする順の身体を美緒は精一杯の力で押し返した。


「やめてってば!もおっ………!」


金切り声をあげた時だった。


「うっ……」


美緒はふいに息苦しさをおぼえ、立ち止まった。


心臓が大きく波打つ。


ドクドク…ドクドク……


さっき感じた、苦い液が腹の底から湧いてくる感覚。


周りの景色がぼやける。

スイッチを切ったように、周りの音が聞こえなくなる。


「………あ」


無意識のうちに、両手で胸の辺りを抑えていた。