名前を教えてあげる。



育児指導は美緒が受けるのに、保健師は横に座る美緒を通り越して、順の顔ばかりを見ていた。


「少食な赤ちゃんもいるから。
体重のことはあんまり気にしないでね。恵理奈ちゃんは確かに細い子ですけど、きっとこれから増えると思いますよ」



ーーまた順の方を見て言った……!

こんなのただの世間話だ。
時間がもったいない。


あまりの居心地の悪さに、腹の底から苦いものが湧いてきた。


固い表情の美緒をよそに、保健師はやたら明るく言う。


「恵理奈ちゃん、パパ似ですよねえ?お顔の輪郭なんかそっくり!」


「そうですか?でも、よく言われます」


「鼻筋も通ってるし、きっと美人さんになりますねえ」


「だといいんですけど」


順が笑顔で答え、ウフフ、と保健師が黄色い笑い声を立てた瞬間、美緒の我慢は頂点に達した。


「こっんなの、無駄っ!……馬鹿みたい!」


そう叫んで立ち上がり、恵理奈を乗せたバギーを押して歩き出した。


「美緒!失礼だろ……
すいません。
怒りっぽくなってて。ありがとうございました」


保健師に頭を下げたあと、慌てて追いかける。



『怒りっぽくなってて』



順の一言が、美緒の苛立つ心にさらに油を注いだ。


ーー何が指導だよ…余計ストレス溜まるよ!


早歩きでバギーを押しながら、検診の待ち時間に起きた出来事を思い出す。