名前を教えてあげる。



「あのな、ミョウ。
乙女っていうのは、男を知らない女を言うんだよ。
君は違うだろ?証拠はその腹だ」


ニヤニヤしながら、ドラマの謎解きシーンみたいに、美緒の腹を指差す。


「順調なのか?」


「うん。もう来月生まれるんだもん。
お腹めちゃ重くって!
時々暴れてぼこぼこ蹴ってくるしねえ。
引っ越しは来週だけど、順が準備とかなんでもやってくれるから、美緒はネットとラマーズ呼吸法三昧!」


マスタード色のマタニティ服の上から腹をさすりながら美緒が答えると、ヒロが柔和に微笑む。


「ミョウもすっかりお母さんぽくなってきたもんな」


「そうでしょ?毎日、イメトレしてるんだ!オムツ替えとか、ミルクあげるのとか」


「そうか。実物見れないのが残念だ」


口の右端を少し引き上げて、クッと笑うのは、ヒロのクセだ。
初めは冷たい感じするけれど、慣れてしまえば返って親しみが湧く。


夏頃までの滞在の予定が急遽、来月の美緒の出産を待たずにヒロがニューヨークへ戻ることになった。

それをきっかけに順と美緒もアパートを借りて、2人の新生活をスタートさせることになっていた。