名前を教えてあげる。



「あ〜ん、スゴ過ぎるう……」


美緒が窓ガラスに両手をついて、景色に見惚れていると、順が美緒の頬に唇を近づけてきた。

美緒は素早く横を向き、順の唇と重ねる。


久しぶりのキス。


順の右手が美緒の肩に延び、息遣いが荒くなる。
舌を差し入れてくるのは、いつも順の方からだ。


順の舌と美緒のそれが触れ合った途端。


玄関の方からガチャリ、と金属音がした。

美緒と順は素早く離れた。


「…チックショー…いいとこなのに…」


順が悔しげに小声でつぶやくのが面白くて、美緒はクスクスと笑ってしまう。


リビングのドアノブが廻された。


「ヒロ、お帰りなさい!」


順が子供のように出迎えると、ドアの向こうからスラリとした長身の男が姿を現した。
マンションと同じに、その男も美緒が初めて見るタイプだった。


「国際弁護士」という雲の上のような職業からして、なんとなく眼鏡を掛けた中年のメタボリックな男を想像していたのに、全然違った。

思わず美緒は魅入ってしまう。


いかにも仕立てのよいグレーのスーツに、ブランドものらしい、紺系のネクタイを身につけている。

例えていうなら、順をもっとスマートで精悍にした感じの男だ。