名前を教えてあげる。



「やめて……お願いだから」


順の腕を振りほどいた。


最後なら、まだ言いたいことがたくさんある。


近くの公園に移動した。


2人でも何度か来たことのある場所だ。


季節が変わり、同じ時間なのにあの頃とは違って、今は太陽が沈みかけている。


順と歩きながら、『今年は暖冬のようでえす!』と朝、お天気キャスターが言っていたのを思い出し、美緒は「本当だ……」と心の中でつぶやいた。


たくさん積もった落ち葉を払いのけて、2人でベンチに座った。

思いがけず、木製のそれは冷えていた。


「冷た……」

「あ、待って」


反射的に美緒が腰を浮かせると、順がスポーツバッグの中からハンカチタオルを取り出して、美緒の場所に敷いてくれた。

「ありがと…」


相変わらず、優しい、と思う。
逢わなくなってから、そんなに日が経っているわけでもないのに、順の面影に懐かしいような気持ちになる。


少し、痩せたみたい……


横顔の二重瞼の目がさらにくっきりとして見えた。

何度もキスをしたことのある、ふっくらとした唇が乾き、少し白くなっている。


前みたいに楽しく話せたら、どんなにいいか…


悲しくなる気持ちを奮い立たせて、美緒は順に掛ける言葉を探した。