名前を教えてあげる。



それは見覚えのあるコンバースのスニーカーだった。



「美緒!」


聞き覚えのある声がして、美緒は顔を上げた。


校門の外に黒いスポーツバッグを携えた中里順が立っていた。


高3になったばかりの春。

スーパーの通用口で美緒を待ち伏せしていた時のように、制服のブレザー姿で。


「順……」


別れをいいにきてくれたんだ、と美緒は思った。お互い嫌いになったわけではないけれど、こんなことになってしまった以上、交際が続くはずがない。



「いろいろ迷惑かけちゃって、ごめんね…」


先に謝ったのは美緒の方だった。

美緒の言葉に、順は顔を強張らせた。


「…なんで?悪いのは俺だ」


呟くように言うのに、美緒は首を振った。


「…私が、いけないの。本当はもっとずっと前にわかっていたのに、怖くて知らんぷりしていたから…
早くしてれば、簡単な手術で済んだのにってお医者さんにも言われちゃった…」


ふいに順が、美緒の肩を抱いた。


「1人で苦しむなよ…」


美緒の耳元で呻くように言った。


校門の横を下校の下級生達が通り過ぎる。
抱き合うような格好に、好奇心たっぷりの視線が集まるのが、今の美緒には耐えられなかった。