「はいはい、席についてくださーい。伊東さん、早く」
「ほーい」
担任の宮川先生(37歳・独身・彼氏ナシ)は、教室に入ってくるなり、姿も確認せずにむっちゃんを名指しした。
もう毎朝のことだ。
ぶー、と形の良い唇をとがらせて、むっちゃんは名残惜しげに私から離れる。
窓の外から射してくる光を受けて、彼女の金髪はより一層輝いて見えた。
――――むっちゃんの外見は、ばりばりの外人さんだったりする。
日本ではちょっとお目にかかれない金色のショートカットに、澄き通ったガラス玉のようなブルーアイ。
完全完璧な金髪碧眼の美少女なのだ……見た目は、だけど。
「なんや先生、今日えらいメイクに気合入っとんなあ。合コンか?」
白くて細い脚を机の上に乗せ(なぜだかパンツは見えない)、むっちゃんが教卓の前にいる先生に声をかけた。
…………口調がコテコテの関西弁でなければ、もう少し女子としての恥じらいがあれば。
「無理無理、そんな厚化粧したってばれるもんやで」
「……伊東さん、今はHR中だから、私語は慎むように」
先生のこめかみに青筋が浮かんだ事に、むっちゃん以外のクラスメイトは全員気が付いた。
