唇が重なるまで、残り何センチか。


狭い個室に呼吸の音だけがやけに響き、心臓の高鳴りに拍車をかける。


艶っぽい瞳に射ぬかれ、私は覚悟を決めた。



ファーストキスの相手は、お隣の大家さんか――――――。




目を、強く瞑った。



やがて、柔らかい感触が…………

















こなかった。


おもむろに体を押され、勢いで元の席に戻ってしまう。


「なんてね。いくらなんでもオッサンが女子高生の唇奪うのは、犯罪だよね」


さっきまでの甘い空気はどこへやら。

大家さんの快活な笑い声で、あっという間に明るいムードになる。