「なんだっけ、『ユウ』だったかな…」


いつだったか教えてもらった、大家さんのペンネーム。

調べてみようにも、何も持ってきてないんだけど。

……携帯を『携帯』する癖を、そろそろつけた方がいいかも。


「ごめん、お待たせ」


前方から走ってくる人影が見えた。

大家さんだ。


「いえ、大丈夫です」

「よかった。行こうか」


目の前に差し出された手に自らの手を重ね、鮮やかな光を放つ観覧車に向かう。

なんの抵抗もなく手を繋げるようになるなんて、やっぱり私はこの人に―――


――――――毒され始めてるのかな。