荷物を車に置いてくるから、ちょっと待ってて。

そう言って、大家さんは駐車場に行った。


彼の言い付け通り、遊園地にあったベンチに私は座っている。

時刻は午後7時半過ぎ、観覧車の中央にでっかくつけられたデジタル時計が示していた。

休日最後の夜だからか。

夜の遊園地にはそれなりに人がいる。


ぼんやりと宙を見ながら、気が付くとネックレスを触っていた。

ふと見れば、今の私の格好で行きと同じなものは何一つない。

たった1日で、とんでもない額を使わせてしまったものだ。


「返さないと、だよね……」


彼は「取材の一環」だと言っていたけど、こんなに使って大丈夫なのだろうか。

私が知らないだけで、実は超有名な小説家としてバンバン稼いでいるとか……?