「俺今度さ、年の差の恋愛モノ書きたいんだよね」

「年の差…ですか」

「うん。俺の場合大体実体験もとにして書くから、今回は年の差の恋愛をしなくちゃいけないわけ」


『実体験』をもとにした『恋愛小説』。

その言葉は、私の知らないうちに、心の奥の奥に残った。


「でもほら、年上ってあんまり興味がないわけですよ」

「はあ……」


曖昧な相槌を打ち、彼の背を見つめる。

確かにこのドS小説家は、リードしたいとか思いそうだ。


「ほとほと困り果てていた俺に、勝利の女神は微笑んだ」

「どういう意味ですか?…わっ」


すれ違い様にぶつかられ、思わずよろける。

ぐらりと体勢を崩し、重心が後ろに偏った。

――今転んだら、踏まれる。