その来客は、日曜の昼下がりにやって来た。


アパート・オークラでの生活が始まり、1週間近くたつ。

学校の先生に事情を説明し、教科書などの勉強道具は予備を貸してもらった。

警察を呼ぶかと聞かれたが、それには首を振っておいた。

どうせ見つかったところで、借金は減らないのだ。

本人が返すと言っているのだから、放っとけば帰ってくる。


昔から、運だけは良い父親なのだから。



「あ、はいはーい」


今にも壊れそうなピンポンが鳴ったので、うちわを持ったまま玄関へ向かう。

クーラーなんてものを使っては電気代が馬鹿にならないので、節約だ。


「あれま、これまた珍しい」

「やほー。死んでない?」


蝉の鳴き声がうるさい外には、灰色スウェットではない大家さんがいた。