「渋い、にが、と思ったら急に甘さがきて、喉の奥をねっとり過ぎたと思ったら急に辛くなって、最後は気持ち悪い酸味がくる。なに、なんなの。味のメタモルフォーゼなんだけど。何入れたの」


しげしげとカップを覗き込み、大家さんが味の感想を捲し立てる。

私はそんな彼の質問に、答えてあげることにした。


「何を入れたか、ですか……。隠し味ですけど、教えましょう」

「紅茶に普通隠し味とかないけどね」



「タバスコです」



語尾にハートマークをつけ、とびきりの笑顔で公開してみた。

普通、甘さの反対と言えば辛さだよね。

定番とお約束は守らない、これぞ大人の選択!


大家さんの顔が固まり、それから納得したように笑顔になる。

私と大家さんはしばし微笑み合っていたけど、大家さんの笑みが濃くなり、





「バカじゃねーの」





無理やり特製紅茶を口に突っ込まれた。


「ぬふぉっ、にっが…うわ、甘!えっ、辛い辛いってなにすっぱ―――い!!」


それはまるで、地獄絵図。


これが後々語り継がれる、タバスコ紅茶の乱でございます。


「華火ちゃん、いや、華火」

「いきなり呼び捨てにされた!今の一件でちょっと見下してますよね?!」

「今後、台所に入ることを禁ず」

「えー」


―――――――大家さんの職業は。


SでKYな純愛小説家様ですとよ、へっ(ヤケクソ)。