「んー……一段落!」
視界の端で灰色のスウェットが伸びをする。
続いて何かを探るように右手が動き、ライターの点火音。
山ほど抱えた本を1冊ずつ入れるのがまどろっこしくなり、5冊ほどまとめて棚に突っ込んだ。
大小様々な本に、種類もバラバラ。
節操がないとも取れるチョイスは、お仕事柄というやつだろうか。
「私、何か淹れてきましょうか?」
歩き回れる程度には片付いた部屋を見渡して、煙草の煙をくゆらせる背中に声をかけた。
「お願いー」
「コーヒーと紅茶ならどっちですか?」
「紅茶。あ、砂糖は2本で」
「……了解です」
わかったこと。
大家さんは甘党のようです。
