可愛らしい色をした表紙の本を大家さんに渡し、それ以外の片付けを続ける。
私が腰を屈めて本を拾うと、固い紙が擦れる音がした。
大して広くもない部屋に、大家さんがパソコンのキーを打つ音と紙擦れの音が響く。
「あのー、大家さん」
「なに」
動かす指を止めず、明るいディスプレイに目を向けたまま、大家さんは素っ気ない返事をした。
私は重ねた本を抱え、壁際の本棚の前に立つ。
「大家さんって、いつからその仕事してるんですか?」
「えー、いつからって言われたらよくわかんないなあ。書いてたのは結構前からだけど、仕事って言われるとね」
「楽しいですか?」
「まあね。楽しくないとやってけないよ」
タン、と軽やかな音が鳴り、続いていたタイプキーが止んだ。
