「…あ、の。ありがとうございます」
静けさを破ったのは私だった。
きちんと座り直し、大家さんに頭を下げる。
「んー?別にいいよ。大家とか気まぐれだし、そもそもここの管理人俺のじいちゃんだからさ」
「そうなんですか?」
「そ。じいちゃん死んじゃって、遺産代わりに引き継いだの」
「へー……」
再びの沈黙。
まずい、会話を終わらせたのは私だ。
ここは、私が話を弾ませなければ。
そう思って口を開いた瞬間、大家さんが何かを思い出したように声を出した。
「あ」
「どうしたんですか」
「してほしいことあった」
頬杖をぱっと崩した大家さんが、にんまりと笑みを浮かべる。
