「こんな夜遅くに、女の子が1人で家の前に座ってたら、心配するでしょ!!」
大家さんは額に手をやり、呆れたように私に言った。
「……何もなかったみたいでよかった」
「す、すみません…」
「2度とこんな事しないで」
「………はい………」
鬼のような顔で睨まれて、私はこくこくと頷く。
なんだこの人、おっかなすぎる。
「…で?理由は何だったの」
そう促されて、私はようやく要件を思い出した。
座ったまま本を抱き締め、大家さんを見上げる。
「これ、すっごく良かったです!!」
金平糖の愛した時間。
切なすぎて悲しすぎて、でもどこかほっこりする、大人の純愛小説。
脱いだ服を畳むことさえ面倒くさがる目の前のモノグサ大家さんが、この超繊細なお話を書いたなんて、未だにいまいち信じられない。
