「華………」
「お邪魔しますね」
大家さんが言いかけた言葉を遮って、私は家の中に体を滑り込ませる。
真っ直ぐ台所に向かうと、お粥の入った鍋の蓋を開けた。
食べ物からしちゃいけない臭いのするお粥は、どういうわけか、私がよそった時より減っている。
『ユウは優しいから』
美和子さんの言葉がぐるぐる頭を回り、私は無言で鍋を持ち上げた。
後ろの棚にあるゴミ袋を広げ、鍋の中身を流し入れようと傾ける。
「何やってんの!」
大家さんの手が、お粥を捨てようとした私の手を止めた。
「だってこれ、洗剤入ってるんですよ?!」
「……知って…」
「さっき美和子さんと話してるのが聞こえたんです!あの人の言う通りですよ!こんなの食べるなんてどうかしてる!」
