「………アイツ…ユウはさ、あれでもプロの小説家なんだよね」
くい、と顎で大家さんの家を指し、美和子さんは冷たい目で私を見た。
「知ってます……けど…」
「洗剤の入ったお粥なんて変なもの食べて体を壊したら、色んな所に支障が出るの」
彼女の言いたい事がわかって、また胃の辺りが締め付けられる。
自分のしでかした事の大きさに気付き、目の前が段々真っ黒になっていく。
「ユウは優しいから、多分華火ちゃんを責めないし、体調が悪化しても隠すだろうから、言っとくよ」
美和子さんが綺麗な黒髪を手で払った。
ふわりと、香水の匂いが鼻をつく。
―――薔薇の、匂い。
大家さんの寝室でした、大人っぽい、薔薇の、匂い。
「これ以上ユウの仕事の邪魔をしないで。今は隣に来た可哀想な女子高生として構われてるだけ」
「華火ちゃんは、ユウにとって何一つプラスにならない存在なんだから」
