がチャリ。
「「………………………」」
しかし、間に合わなかった。
大家さん家の玄関が開いて、見るからに大人な女性が出てきて、私と目が合う。
数秒お互いに黙っていて、それからぎこちなく会釈をした。
そして、気付く。
この人、私が2階から飛び降りた時に大家さんと一緒に居た人だ。
重い沈黙を破ったのは、彼女――美和子さんだった。
「………アンタが、華火ちゃん?」
眼鏡の奥の切れ長な目が、訝しげに私を捕らえる。
「………はい」
「ふーん」
赤い口紅が引かれた唇は妖艶で、女である私から見ても魅力的だ。
何を言われるのかと美和子さんを見上げ、次の言葉を待つ。
