「洗剤入りのお粥山盛り食べるとか、死にたいの?」
………………え?
洗剤、入り?
「やー、まあ『油』と『油汚れも楽々落とせる』ってほら、見間違えるっていうか……」
弁解する大家さんの声を聞き、ようやくわかった。
じゃあ、彼は、洗剤が入ってるってわかったまま、私のお粥を食べたの?
「ほんっとバカ!とにかく吐いてきなさいよ、その間に何か作っとくから」
「吐くなんて勿体ないよ」
「胃溶けて死ぬよ」
壁一枚隔てたあちらで繰り広げられる会話。
じゃあ、じゃあ、じゃあ。
美味しい、なんて言葉は嘘じゃないか。
私をコンビニに行かせたのも、私に不味いお粥を食べさせないためじゃないか。
色んな感情がない交ぜになって、私はその場から動けずにいた。
「もう帰るから、ちゃんと寝ときなさいよ、ユウ」
女の人の声が聞こえて、半分飛びかけてた意識が引き戻された。
どれくらい立っていたかはわからないけど、とにかくこのままじゃ彼女と鉢合わせてしまう。
そう思い、足を一歩踏み出した。
